攻撃防御方法

攻撃防御方法（こうげきぼうぎょほうほう）とは

「攻撃防御方法」とは、日本の民事訴訟における基本的な概念の一つであり、訴訟の当事者である原告と被告が、それぞれ自己に有利な裁判結果を得るために裁判所に提出する一連の行為や資料の総称です。具体的には、原告が行うものを「攻撃方法」、被告が行うものを「防御方法」と呼び、これらをまとめて「攻撃防御方法」と称します。この概念は、裁判所が公正な判決を下す上で不可欠な、当事者から提供される判断材料そのものを指し示しています。

民事訴訟は、原則として当事者が自ら事実を主張し、証拠を提出することで成り立っています。裁判所は、当事者が適切に提出したこれらの主張と証拠（すなわち攻撃防御方法）に基づき、事実を認定し、法を適用して紛争を解決します。攻撃防御方法は、裁判所の判決の根拠となるべき「訴訟資料」の中核をなすものです。

攻撃方法

「攻撃方法」とは、原告が提起した訴訟において、自身の請求が正当であることを裁判所に認めさせ、自己の希望する判決（例えば、被告に対する金銭の支払命令など）を獲得するために用いる手段全般を指します。これには、請求の原因となる具体的な事実を裁判所に主張することや、その主張した事実が真実であることを証明するための証拠（契約書の提示、関係者の証言を求める申出など）を裁判所に提出することが含まれます。

原告は、攻撃方法を通じて、自らの権利や法的な利益が侵害されている状況や、被告に特定の義務があることを裁判所に訴えかけます。これらの主張と証拠の申出は、裁判所が原告の請求が法的に根拠があるかを判断するための基本的な情報源となります。効果的な攻撃方法の提出は、訴訟における原告の立場を強固にし、有利な判決を導くために極めて重要です。

防御方法

一方、「防御方法」とは、被告が原告の請求に対抗し、その訴えの却下や請求の棄却といった、自己に有利な裁判結果を得るために用いる手段全般を指します。被告は、防御方法を通じて、原告の主張する事実を否定したり、原告の主張とは異なる新たな事実（例えば、借金は既に返済済みであるという事実や、契約が無効であるという事実など）を主張したりします。

また、被告は自己の主張する事実を証明するための証拠を提出したり、原告の提出した証拠に対する反論を行ったりすることも防御方法に含まれます。防御方法の目的は、原告の攻撃を退け、裁判所に原告の請求には理由がないと判断させることにあります。被告による適切な防御方法の提出は、訴訟における自己の権利や利益を守るために不可欠です。

訴訟資料としての中核

攻撃方法と防御方法は、合わせて民事訴訟における「訴訟資料」と呼ばれ、裁判所が判決を下す上で最も重要な基礎となります。裁判所は、当事者が提出したこれらの資料に基づき、どのような事実が裁判の対象となっているのかを把握し、その事実に対してどのような法律を適用すべきかを判断します。

当事者は、自己の主張を明確にし、それを裏付ける証拠を適切に提出する責任を負っています。裁判所は、原則として当事者が提出していない事実や証拠に基づいて判決を下すことはできません（弁論主義）。したがって、当事者による攻撃防御方法の提出は、単に自己の言い分を述べるだけでなく、裁判所に正確な事実認識を促し、公正な法適用を可能にするための極めて重要な手続行為と言えます。

法令上の用語について

「攻撃防御方法」という用語は、日本の民事訴訟法や関連法令において用いられています。ただし、法令の条文本文においては、通常は「攻撃又は防御の方法」、文脈によっては「攻撃若しくは防御の方法」という表現が用いられることが一般的です。例えば、「攻撃又は防御の方法の提出」といった形で使用されます。一方で、条文の見出しなどにおいては、より簡潔に「攻撃防御方法」という用語が用いられることがあります。これは、法律用語として正確性を期す必要のある本文と、概念を端的に示す見出しとで、表現を使い分けているためと考えられます。

このように、攻撃防御方法という概念は、民事訴訟における当事者の能動的な活動、すなわち自己に有利な主張と証拠の提出を体系的に捉えたものであり、現代民事訴訟の仕組みを理解する上で欠かせない要素となっています。

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