放射線医学

放射線医学

放射線医学は、放射線を利用した診断や治療を中心とした医学の分野です。医療機関では、一般的に「放射線科」と称されますが、「放射線診断科」や「放射線治療科」という名称を用いる場合もあります。

歴史的背景

放射線医学は、1895年にヴィルヘルム・レントゲンがX線を発見したことによって大きな転機を迎えました。この発見は、医療のみならず物理学の発展にも寄与し、レントゲンは1901年に最初のノーベル物理学賞を受賞しました。X線の発見の翌年には、がんに対するX線治療が開始され、1896年には進行期上咽頭がんに対する疼痛緩和照射の記録があります。その後の技術革新により、強度変調放射線治療（IMRT）や画像誘導放射線治療（IGRT）といった高度な治療法も開発されました。

撮影技術も次第に進化し、単純X線写真から始まり、1970年代にはコンピュータ断層撮影（CT）が実用化され、その後、核磁気共鳴画像法（MRI）、単一光子放出型コンピュータ断層撮影法（SPECT）、陽電子放射断層撮影（PET）といった新たなモダリティが登場しました。

放射線医学の分類

放射線医学は主に以下の三つの分野に分けられます。

放射線診断学

放射線診断学では、X線撮影、CT、MRI、SPECT、PETなどの技術を使用して、身体内部の状態を確認します。

画像下治療（IVR）

画像下治療は、放射線診断の手法を利用した治療方法で、経皮的アプローチを行ないます。細いカテーテルや注射針を使って、病変部位に直接アプローチし、必要な治療（生検、熱破壊など）を行います。この手法は、従来の手術に比べて体への侵襲が少なく、多くの患者にとって優れた選択肢となっています。

放射線治療学

放射線治療は、悪性細胞を死滅させるために高エネルギー放射線を用いる治療方法です。主にX線や電子線が使用されていますが、近年では陽子線や重粒子線を使用した施設も増えています。これらの新技術は有害事象を軽減する可能性があり、より効果的な治療が期待されています。

核医学

核医学は、放射性同位元素を使用して身体内部の生理的および生化学的機能を評価する分野です。核医学では、放射化された薬剤を体内に投与し、その動態を観察します。具体的には、ガンマカメラを使って薬剤の分布を確認することが一般的です。

医療被曝に関しては、放射線は医学的利益をもたらすための手段である一方、その影響についても注意が必要です。医療における放射線の使用は、患者にとって必要な利益がある場合に正当化されますが、被曝量を最小化する努力も求められています。

現状と課題

日本はCT機器の利用が非常に進んでおり、それに伴い医療被曝のリスクも増加しています。CTや他の画像診断法による被曝をいかに低減していくかが、今後の課題となるでしょう。また、医療技術の進歩とともに、放射線を利用した新たな治療法も開発が進んでおり、より多くの患者にとって有益な選択肢が提供されています。これにより、放射線医学は今後も発展を続けることが期待されています。

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