敬

敬（けい）とは

敬、または「つつしみあざむかない心」とは、儒学において非常に重要な概念の一つです。この言葉は、特に中国の儒学において深い意味を持ち、学問や倫理の基礎となっています。敬は、単なる礼儀や表面的な振る舞いだけではなく、内面的な態度や精神性を涵養するものとされています。

敬の定義と意義

中国の儒学では、敬を「主一」と定義し、さらに「心を集中専一の状態に保ち続けること」と説明しています。これは、自己の心をしっかりと見つめ、乱れないようにする姿勢を意味します。朱熹はこの敬の重要性を強調し、「聖学の始めを成し、終わりを成す所以のもの」と述べています。つまり、敬があることでこそ、学問の進行や完成がなされるというわけです。

江戸時代の儒学者林羅山の視点

江戸時代初期の儒学者である林羅山（林道春）は、彼の著作『春鑑抄』の中で、国家を良く治めるためには、単に「うやまう」のではなく「つつしむ」こと、すなわち「敬」が不可欠であると述べました。ここでの敬とは、序列や秩序を保つための精神的な心構えを意味しています。さらに、彼はこの敬を具体化するものとして「礼」（礼儀・法度）を重要視しました。

彼の思想において、敬は単なる抽象的な概念ではなく、実践的な行動や態度に結びつくものであり、社会的な秩序を築くための基盤となるものであるとされます。

存心持敬という考え方

羅山は「上下定分の理」という考えを提唱し、社会における人々の立場や役割を明確にすることが重要であると主張しました。この理論の中で、敬の心を持ち続けること、すなわち「持敬」の姿勢は非常に重要です。彼は「存心持敬」という言葉で、この敬の心を常に保ち続けることが、人々の行動や社会の秩序にどれほど大切かを強調しました。

この持敬の姿勢は、特に武士階級に深い影響を及ぼしました。武士たちは自らを社会の指導者として捉え、自己を厳しく律することが求められました。敬を持つことによって、自己の行動が他者にどのように影響を与えるかを意識し、社会における責任を果たそうとする動機付けが生まれました。

敬の現代的意義

このように、敬の理念はただ過去の儒学に留まらず、現代においても重要な価値を持ち続けています。人間関係における尊重や礼儀、さらには社会的責任を果たすための心構えとして、私たちが日常生活で心掛けるべきものと言えるでしょう。敬を持つこと、つまりつつしみあざむかない心を育むことは、個人の人格形成や社会の調和に寄与する重要な要素であるといえるでしょう。

結論

以上のように、敬は儒学において非常に深い意味を持ち、ただの礼儀にとどまらない、心からのつつしみを指す概念です。林羅山などの思想によって、私たちはこの重要な心の在り方を再認識し、現代社会に活かす必要性を学んでいくべきです。

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