整備管理者

整備管理者とは

整備管理者（せいびかんりしゃ）とは、日本の道路運送車両法に基づく資格を有する者であり、大型自動車の使用者が自動車の点検や整備、車庫の管理を行うために指名された個人を指します。この役割は、特に構造が特殊で事故が起きた際の被害が大きい大型バスなどにおいて、安全性を確保するために重要です。

自動車の保安基準の維持

自動車の使用者は、使用する自動車が保安基準に適合するよう、定期的に点検及び必要に応じた整備を行う義務があります（道路運送車両法 第47条）。ただし、特に大型自動車のように業務で意図的に狭い道や混雑した地域を走行する場合、単に点検や整備を行うだけでは不十分です。従って、整備管理者が適切に管理することで、事故によるリスクを低減する役割が求められています。

整備管理者の選任義務

整備管理者は、自動車の使用者から選任されることが法律で定められています。大型自動車や特定の条件を満たすマイクロバスなどについては、一定台数以上の車両を保有している場合に整備管理者の選任が必要です。具体的には、事業用と自家用で定員や総重量によってサイズ分けがされ、複数台のマイクロバスを使用する場合なども選任の義務があります（道路運送車両法 第50条、施行規則 第31条の3）。

資格要件と選任プロセス

整備管理者には一定の資格要件が求められます。まず、過去に自動車の点検や整備に関する業務経験が2年以上あることが必要です。また、地方運輸局長が行う研修を修了した者や、各種整備士資格に合格した者が対象です。さらに、適切な資格要件を満たさない場合、整備管理者としての任命が無効となります（施行規則 第31条の4）。

整備管理者の職務と権限

整備管理者は、点検や整備の業務を効果的に行うために、日常的な点検方法を定める権限を持ちます。具体的には、運行可否の決定や定期点検の実施、整備計画の策定など多岐にわたる業務を担っています。整備管理者は、業務を遂行するために必要な人員の指導や監督も行うことが求められます。

届出の義務

整備管理者が選任された場合、大型自動車の使用者は15日以内に地方運輸局長へ届出を行わなければなりません。届出内容には、整備管理者の氏名や資格、職務に関する記載が必要です。届出内容に変更があった場合も、その都度速やかに報告する義務があります（道路運送車両法 第52条、施行規則 第33条）。

研修制度

整備管理者に対する研修は2種類あり、選任前研修では基礎知識や技能が求められ、選任後研修では最新の技術や法令の周知が目的となっています。これは整備管理者の知識および能力の向上を図るために欠かせない要素です。

事故報告の義務

自動車事故が発生した場合、大型自動車の使用者は一定の期限内に国土交通大臣へ報告を行う法律が存在します（道路運送車両法 第100条）。この報告義務を怠った場合、罰則が科される可能性があります。また、事故原因が整備不良であった場合、解任命令が発動することもあります。

罰則と法令違反

整備管理者が選任義務を果たさなかった場合や、虚偽の届出を行った場合などには、罰金が科せられることがあります（道路運送車両法 第110条）。また、運送事業者には、より厳格な規制やペナルティがあるため、法令遵守が非常に重要です。こうした整備管理者制度は、自動車の安全運行を保つために欠かせない制度であり、より良い道路交通環境の実現を目指しています。

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