敵は海賊

敵は海賊

『敵は海賊』（てきはかいぞく）は、神林長平が1981年4月号の『S-Fマガジン』に発表したSF小説であり、その後シリーズとして続編が刊行されています。この作品は、著者の他のハードSF作品とは一線を画し、ユーモアと独特の文体、緻密な世界観が特徴です。

概要

本作は、宇宙を舞台にした海賊と、彼らに立ち向かう治安機関である「広域宇宙警察・対宇宙海賊課」を中心とした壮大な物語です。宇宙への入植が進む未来社会で、火星や土星の衛星タイタンに人々が住む時代、凶悪な星間犯罪が横行し、それらの犯罪者を海賊と呼んでいます。海賊課は、海賊を取り締まるために設立された機関で、強制捜査権を持ち、独自の装置「インターセプター」を用います。これにより、彼らはあらゆる組織のコンピューターにアクセスし、海賊の即時射殺も行う権限を持っています。

シリーズが進むにつれて、設定や物語の方向性がさまざまに変わるため、それぞれの作品は独立した形で楽しむことができ、各巻がほかの巻の続編となるという緩やかな関係が築かれています。

世界観

物語の舞台は、宇宙での人類の活動範囲が拡大した未来です。人類は火星やタイタンに居住し、他星系の生物とも共存しています。しかし、その一方で、星間犯罪が増加し、海賊たちがはびこる世の中となっています。この治安を維持するために存在するのが海賊課です。彼らは海賊の取り締まりを主な任務とし、市民から恐れられながらも、正義を貫こうと奮闘します。

物語の主な登場人物であるラウル・ラテルは、一級刑事として海賊課ラテルチームの隊長です。彼は海賊に家族を殺され、その復讐心から海賊退治に情熱を燃やします。彼のチームメンバーにも、黒猫型異星人のアプロや、感情を持つ超高度知性体のラジェンドラなど、多様なキャラクターが揃っています。

主要登場人物

• - ラウル・ラテル：海賊課一級刑事で、海賊課の優秀な隊長。射撃の腕前も抜群で、復讐と正義の狭間で葛藤しつつ、海賊との戦いに明け暮れる。
• - アプロ：特殊な能力を持つ黒猫型異星人で、海賊課の強力な攻撃力を支える。倫理観の欠如や嗜虐的な性格からトラブルメーカーでもある。
• - ラジェンドラ：感情を持つA級知性体の艦船で、ラテルやアプロの仲間。独自の自尊心を持ち、ゆるい関係を築いている。

作品の展開

『敵は海賊』の続編として、『敵は海賊・海賊版』、あるいは『敵は海賊・猫たちの饗宴』などがあり、後者は1989年にアニメ化もされています。シリーズは全体で長編8作品、短編1作品が出版され、短編の中には本作の原点となった作品が含まれています。これにより、シリーズ全体が多層的な魅力として構成されています。

読者へのメッセージ

このシリーズは、ただ単に海賊との戦いを描いた作品ではなく、キャラクターたちの人間ドラマや倫理的な葛藤が深く掘り下げられています。SFの枠を超えた豊かな物語世界が広がっており、宇宙を舞台にした冒険ファンタジーが好きな読者にとって、非常に魅力的な作品となることでしょう。

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