斎藤寿一

斎藤寿一（1931-1992）は、日本の版画家として知られています。その鮮烈な青を用いた作品群から「青のサイトウ」の呼び名で親しまれ、日本の現代美術史に重要な足跡を残しました。

神奈川県川崎市に生まれた斎藤は、当初は油彩画を手がけ、春陽会に出品するなどしていました。しかし、1958年から1959年にかけてフランスに滞在。この期間、浜口陽三氏に紹介される形で、パリのアトリエ17（Atelier 17）で著名なイギリス人銅版画家S.W.ヘイターに師事し、銅版画の技術を深く学びました。

フランスでの研鑽は、斎藤の芸術家としての道を大きく変えました。帰国後の1960年には初の個展を開催。その後、独自の画風を確立し、1963年にはそのスタイルが完成したとされています。青を基調とした、独特の色彩感覚と表現力は高く評価され、多くの作品を生み出しました。

芸術活動と並行して、斎藤は教育にも力を注ぎました。1971年には和光大学人文学部助教授に就任し、1976年には教授に昇進。大学での教育活動を通して、後進の育成にも尽力しました。

版画制作にとどまらず、斎藤は彫刻にも造詣が深く、石彫や木彫にも取り組んでいました。1972年には「立体絵画展」に出品するなど、多様な表現方法に挑戦し続けました。

生涯、川崎市にアトリエを構え、創作活動の拠点を置きました。地元に根ざしながら、国際的な視野も持ち合わせた斎藤は、まさに日本の現代美術を代表するアーティストの一人と言えるでしょう。彼の作品は、現在も多くの美術愛好家によって高く評価され、継続して注目を集めています。

また、斎藤は技術指導にも熱心に取り組みました。自身の経験や技術を後世に伝えるため、『「銅版画の技法」～スライドによる』（美術出版社、1966年）を著し、銅版画技法の普及にも貢献しました。この著作は、現在でも銅版画を学ぶ者にとって貴重な資料となっています。

1992年12月31日、呼吸器不全のため61歳でこの世を去りました。しかし、彼の作品は、その鮮やかな青と力強い表現を通して、今もなお人々の心を捉え続けています。第4回シェル美術賞展でのシェル賞受賞も、彼の才能と功績を示す重要な証左と言えるでしょう。斎藤寿一の芸術は、日本の現代美術史において、常に重要な位置を占め続けることでしょう。

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