断崖 (映画)

断崖 (Suspicion)

1941年に公開された『断崖』は、アメリカの映画界の巨星アルフレッド・ヒッチコックによって監督されたロマンティックサイコスリラー作品です。この映画は、主演を務めたジョーン・フォンテインの巧みな演技と、ケーリー・グラントの魅力的な演技によって、悲運の新妻が抱える疑念を描いています。原作は1932年に発表されたフランシス・アイルズの小説『レディに捧げる殺人物語』で、後の映画に与えた影響も大きいと言われています。

ストーリー概要

物語は1938年、イギリスの列車の中で始まります。プレイボーイのジョニー・エイスガースは、眼鏡をかけた控えめな女性リナ・マクレイドローに出会います。彼女は初め警戒心を抱くものの、彼との関係が進むにつれて心を開いていきます。しかし、旅行中に両親がリナの結婚について話しているのを振り返り、彼女は悲しみの中でジョニーにキスします。

無事に結婚したものの、新婚生活が始まると、リナはジョニーが仕事も収入も持たず、無駄に借金を重ねていることに気づきます。彼女の父親である軍人マクレイドロー将軍は、娘の結婚に不安を抱いていましたが、リナはジョニーに仕事を持たせることを決意します。ところが、ジョニーがギャンブルをやめると約束したにもかかわらず、彼はその裏切りを続け、さらに父親からプレゼントされた家宝の椅子を売ってしまいます。

友人ビーキーはジョニーが面白い男だとリナを慰めますが、彼女は次第に彼の裏切りが明らかになると同時に、ジョニーの信頼性に疑念を抱くようになります。彼の不正行為が明るみに出る中、リナは彼に別れを告げる手紙を書くも、結局はそれを破り捨ててしまいます。

ある日、リナの父親の死を告げる電報が届き、ジョニーは彼女が金を相続しないことを知り、失望します。その後、彼はビーキーをパリの土地開発に借金をするように誘惑しますが、リナはそのことが危険な行為であると心配し、ビーキーに止めるよう説得します。その間に、ビーキーが亡くなるとリナはジョニーがその死に関与しているのではないかと疑惑を抱き、次第に自らの命が危険に晒されているのではと恐れるようになります。

さらに、リナは彼が自分を毒殺しようとしているのではないかと疑念を深め、恐怖のあまり牛乳を飲むのをためらいます。ジョニーはリナを母親の元へ送ると言い張りますが、その行動にリナは恐怖を感じます。二人は崖に面した危険な道を走行し、リナはドアが開いてしまいジョニーの助けを疑います。

ヒッチコックの登場

この映画には、ヒッチコック自身が中盤で郵便屋としてカメオ出演しており、視聴者に楽しみを提供しています。映画はサスペンスとロマンティシズムが交錯し、リナとジョニーの複雑な関係を描き出します。

作品の評価と受賞歴

映画『断崖』は、批評家や観客から高評価を得ており、アカデミー賞ではジョーン・フォンテインが主演女優賞を受賞しました。また、Rotten Tomatoesの評価では高評価を記録しており、そのサスペンス性とヒッチコックの演出が賞賛されています。後の作品への影響も大きく、1987年にはアンソロジーテレビシリーズ『American Playhouse』としてリメイクされました。映画の持つ深いテーマとヒッチコックの独特な演出が組み合わさり、今なお多くの人々に愛され続ける名作です。

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