断絶 (映画)

映画『断絶』について

『断絶』（だんぜつ、原題: Two-Lane Blacktop）は、モンテ・ヘルマン監督により1971年に制作されたアメリカのロードムービーです。この映画は、アメリカン・カルチャーの象徴とも言える作品であり、特にカウンター・カルチャーの影響が色濃く反映されています。本作の魅力は、何と言ってもその主題と登場人物たちの奇妙な関係性にあります。

あらすじ

物語は、シボレーの車を運転する運転手（演じるのはジェームズ・テイラー）と、彼とのコンビで整備工を務めるデニス・ウィルソンが、日銭を稼ぐため地元の住民とドラッグレースを繰り返しながら旅をする様子から始まります。彼らはカリフォルニア州からアメリカの国道66号線を東へ向かい、日常の喧騒から離れた自由を求めて旅するのです。

ある日、アリゾナ州で彼らはヒッチハイカーの少女（ローリー・バード）を拾います。この少女は、運転手にとって未知の存在であり、彼の心に新たな感情を芽生えさせます。しかし、旅の中で彼らはポンティアック・GTOに乗った男（ウォーレン・オーツ）と出会い、彼との間で競争が始まります。彼らは、車両の所有権を賭けて、ワシントンD.C.を目指す一大レースを行うことになります。

物語が進む中で、少女は整備工と一夜の関係を持つ一方で、メンフィスでGTOに乗り換え運転手と整備工を裏切ってしまいます。この展開は、運転手の心に深い葛藤をもたらし、彼は少女を追いかけてダイナーに入り込みますが、少女は再びGTOの男とともに旅立つことを選びます。残された運転手と整備工は再びレースを始め、物語は新たな展開へと向かうのです。

映画の評価

『断絶』は、その斬新なスタイルやストーリー展開から多くの映画評論家に高く評価されています。Rotten Tomatoesでは、35件のレビューをもとに94％の支持率を得ており、平均スコアは7.8点となっています。『The Guardian』のフィリップ・フレンチは、この映画が1970年代前半のアメリカのカウンター・カルチャー映画の中でも際立つ存在であると評しています。また、『The New York Times』のヴィンセント・キャンビーも、出会いやレースの描写がアメリカ特有のリズムを巧みに捉えていると指摘しています。

本作は、2012年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録されることになり、さらに2015年には英国映画協会から「10本の偉大なアメリカのロード・トリップ映画」の一つに選ばれました。特筆すべきは、主人公のジェームズ・テイラーとデニス・ウィルソンがともにミュージシャンであるにもかかわらず、劇中では彼らの楽曲が一切使用されていない点です。これは、監督であるモンテ・ヘルマンが彼らをミュージシャンとしてではなく、俳優として観客に見てもらいたかったからだとされています。

まとめ

『断絶』は、単なるロードムービーではなく、観客に深い思索や感情を呼び起こす作品として位置づけられています。人間関係の複雑さや、友情・裏切り、愛の多様な性質を描いた本作は、時代を超えて多くの人々に影響を与え続けています。

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