新世界ルルー

新世界ルルー:時を操るパラレルワールドの冒険物語



手塚治虫の初期作品『新世界ルルー』(別題『きえた秘密境』)は、1951年から1952年にかけて連載されたSF漫画作品です。科学研究所の所長ドン・ナ・モンデスは、部下のコンチック・ショオの陰謀によって、1000年後に開かれるタイムカプセルに閉じ込められてしまいます。

一方、現代では、漫画家を目指し編集部に持ち込みをするロックという少年が登場します。彼は、人気漫画家バーナード・ショオ(実はコンチック・ショオの息子)の作品に影響を受け、自身の漫画『冒険児ルルー』を創作します。『冒険児ルルー』はたちまち大ヒットしますが、ロックは謎の脅迫を受けるようになります。

この脅迫の影には、タイムカプセルから奇跡的に脱出したドン・ナ・モンデス(プリン伯爵として潜伏)が関わっていました。ドン・ナ・モンデスは、パラレルワールド「新世界ルルー」の住人に助けられ、現代に生きていたのです。新世界ルルーの人々は、自分たちの存在が知られることを恐れており、ロックを誘拐して新世界ルルーへ連れ去ります。

新世界ルルーでは、念じることで時間を止める能力が普通に行われていました。ロックはそこでこの能力を身につけ、ルルーと自分の世界がもっと交流すべきだと考え始めます。しかし、これはルルーでは危険思想とみなされ、哲人コッポポッコによって元の世界へ追放されてしまいます。

一方、ドン・ナ・モンデスはコンチック・ショオへの復讐を開始します。ドン・ナ・モンデスの正体を知ったコンチック・ショオは決闘を挑み、激戦の末にドン・ナ・モンデスは瀕死の重傷を負います。その直前、彼はルルーの存在をスッテン・ドシーン博士に伝えます。

時間を止める能力を知ったゴンドラ卿は、世界征服を企て、スッテン・ドシーン博士を誘拐してルルーへと連れ去ります。ロックはスッテン・ドシーン博士の助手ケン一と共に、博士を救出するため、再びルルーへと向かいます。そして、ルルーに渡っていたコッポポッコの導きにより、二つの世界を繋ぐ通路を閉ざすことで、事態は収束に向かいます。

この作品は、『モンテ・クリスト伯』を彷彿とさせる復讐劇と、パラレルワールドという斬新な設定、そして時間を操る能力というSF的な要素が融合した、手塚治虫らしい魅力あふれる物語です。登場人物たちの個性も豊かで、悪役スターブク・ブックが演じるコンチック・ショオ公爵や、常にタバコをくわえる編集長オノレなど、印象的なキャラクターが物語を彩ります。

『新世界ルルー』は、単行本化の際にタイトルが変更されたり、様々な版が刊行されたりしており、その歴史も興味深い作品です。手塚治虫の初期作品の中でも、特に独特な世界観と魅力的なキャラクターで知られ、現在でも多くの読者を魅了し続けています。特に、無音の状態を「シーン」と表現した最初の作品として知られるなど、漫画表現の先駆けとなった点も注目されます。 様々な要素が複雑に絡み合い、読後感の深い作品となっています。

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