新井祥

新井祥（あらい しょう）

日本の漫画家、専門学校講師。1971年4月17日東京都生まれ。現在は愛知県名古屋市に在住し、オフィス★怪人社の社長も務める。本名はペンネームと同じで、旧名は幸枝（ゆきえ）。自身の性別や多様な生き方、日常を題材にした実話ギャグ漫画で知られ、代表作『性別が、ない!』で広く読まれている。

人物と経験

女性として生まれた新井氏は、幼少期から身体に多様な特徴が見られた。思春期には女性としての第二次性徴が早く現れる一方、男性的な特徴も現れるなど、複雑な身体的変化を経験した。30歳の頃、自身の身体と性別について深く悩んだ末、心療内科を受診。診断結果を待つ前に、男性ホルモン摂取と乳房切除を行った。

その後、30歳時にX染色体が一本少ない「Xモノソミー」、ターナー症候群の一種と診断される。ターナー症候群は通常、内性器も外性器も女性の特徴を持つ。診断後も新井氏は男性化を続ける選択をした。これは、男性ホルモンの効果が強く、女性的な外観に戻ることが難しいと判断し、自身の身体を受け入れたためである。戸籍上の性別は女性のままだが、家庭裁判所の許可を得て名前を「幸枝」から「祥」に変更した。男性として生活し始めた当初は、女性的な言葉遣いや仕草に戸惑いもあったが、現在では自身を「おじさん」と認識し、自然体で生活している。自身の性的指向については、特定の性別にとらわれず人に惹かれる「パンセクシュアル」であると著書で公言している。

作風と活動

新井氏の作品は、自身の日常や経験を題材にした実話ギャグ4コマ漫画が中心である。特に、性別やセクシュアリティに関する内容をオープンに描くことを得意とする。代表作『性別が、ない!』では、元生徒でアシスタント、そしてBL漫画家でもある宇佐木巧氏と共に、性に関する様々な事柄を考察する形式をとる。読者からの相談に回答するコーナーもあり、性の多様性に関する啓発的な側面も持つ。その他、旅行記やペット、名古屋の地域ネタなども描く。

「新井祥」名義以前は「CHACO（チャコ）」名義で活動し、風俗漫画や風俗店レポート漫画を描いていたほか、ヌードモデルの経験もある。CHACO名義時代の漫画は、現在の作風と異なるため、ほとんど非公開とされている。

漫画執筆のほか、専門学校で非常勤講師として漫画指導にあたる。所属するオフィス★怪人社では舞台の脚本などを手掛ける。自身の経験を描いた漫画は、2018年に『性別が、ない! インターセックス漫画家のクィアな日々』としてドキュメンタリー映画化された。

交友関係

新井氏は幅広い人々との交流がある。女性時代に結婚した俳優のIKKAN氏とは、円満離婚後も仕事上のパートナーとして良好な関係を続ける。離婚後もIKKAN氏の本姓である新井姓を名乗る。

芸能事務所所属経験から、お笑い芸人との交流も深く、竹内幸輔氏や桜塚やっくんなど、多くの芸人が友人として挙げられる。これらの友人は作品にもたびたび登場する。セクシュアルマイノリティの友人も多く、一部は『性別が、ない!』にレギュラーキャラクターとして登場する。親交のあった桜塚やっくんや竹内幸輔氏が死去した際は、ブログで追悼メッセージを寄せた。

プライベートでは、長年同棲していた元アシスタントのBL漫画家、うさきこう氏と2020年8月に結婚したことを公表している。

新井祥氏は、自身の経験を率直に描くことで、性別やセクシュアリティの多様性について社会に問いかけ、共感を広げている漫画家である。

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