新保満

新保満（しんぽ みつる、1931年7月24日 - 2015年5月24日）は、日本の社会学者であり、特にカナダ研究の分野で顕著な功績を残した人物である。東京市（現在の東京都港区）に生まれ、福岡県立修猷館高等学校を卒業後、国際基督教大学で社会学を修め、さらに東京教育大学大学院で学びを深めた。

1962年からはカナダに渡り、ブリティッシュコロンビア大学で研究を進め、1970年に博士号を取得した。帰国後、カナダのオンタリオ州にあるウォータールー大学で教鞭を執り、その後1991年には日本の日本女子大学教授に就任し、2002年に定年を迎えた。

新保の研究は多岐にわたるが、一貫してカナダ社会、とりわけその多様性、先住民（インディアン、デネーなど）、移民（特に日系カナダ人）が直面する問題や歴史に深い関心を寄せた。カナダにおける人種的差別や偏見の構造を理論的に分析し、具体的な事例を通してその実態を明らかにした。また、日系カナダ人の歴史、特に排斥とそれに対する適応の過程を丹念に追い、『石をもて追わるるごとく 日系カナダ人社会史』や『カナダ日本人移民物語』といった著作にまとめた。

カナダ先住民に関する研究も重要であり、『カナダ=インディアン 滅びゆく少数民族』や『カナダ先住民デネーの世界 インディアン社会の変動』などを著し、彼らの社会変動や直面する困難を社会学的な視点から分析した。

カナダ社会全体に関する著作としては、『カナダの素顔』や、カナダ首相出版賞を受賞した代表作『カナダ社会の展開と構造』がある。これらの著作を通じて、カナダという国の成り立ち、多文化主義の課題、社会構造の特質などを日本に紹介した。

カナダ研究に加え、新保はオーストラリアの原住民（アボリジニー）についても研究を行い、『野生と文明 オーストラリア原住民の間で』や『オーストラリアの原住民 ある未開社会の崩壊』、『悲しきブーメラン アボリジニーの悲劇』といった著作で、彼らが直面した悲劇的な歴史や社会状況を描き出した。

また、日本の地域社会に関する研究も行っており、岩手県志和地区の経済発展と社会変動を調査し、『村が栄える条件 岩手県志和の変貌』や共著『現代日本農村社会の変動 岩手県志和地区の発展過程』として発表している。これは、カナダのブリティッシュコロンビア大学在籍中にShiwa地区を調査した研究 Three Decades in Shiwa に基づいている。

新保は熱心なキリスト教徒としても知られており、その信仰が研究の根底に影響を与えていた可能性も指摘される。晩年には『カナダ通信 引退教授の辺境世界体験』を著すなど、研究生活の総括や新たな視点からの執筆活動も行った。

新保満の研究は、単にカナダ社会の現象を記述するだけでなく、社会構造、人種、文化、歴史といった普遍的なテーマを扱い、現代社会が抱える多様性の中での共存や差別の問題を深く考察するものであった。その業績は、カナダ研究のみならず、社会学全般、地域研究、移民・先住民研究において重要な位置を占めている。

主な著作に『カナダ=インディアン 滅びゆく少数民族』(1968)、『人種的差別と偏見 理論的考察とカナダの事件』(1972)、『石をもて追わるるごとく 日系カナダ人社会史』(1975)、『カナダ社会の展開と構造』(1989)などがある。共編著には『現代日本農村社会の変動 岩手県志和地区の発展過程』(1986)などがある。

もう一度検索