新幹線十年史

新幹線十年史

『新幹線十年史』は、日本の新幹線が開業から10年が経過したことを記念して国鉄が編纂した公式記録であり、1975年12月10日に発行されました。この書籍には、1964年の東海道新幹線の開業から1974年までの10年間にわたる重要な出来事や、テーマ別の保守、開発、管理運営に関する詳細な記録が収められています。

開業の背景

東海道新幹線は、1964年10月1日に開業しました。この特に重要な日に日本の鉄道史が大きく変わったのです。開業10周年を迎える1974年に、国鉄はこの10年間の歩みを振り返ることを目的とし、記念事業としての編纂を計画しました。原田種達総局長や山本英夫総務部長が推進し、専門委員として関山栄次と吉村正巳が参加しました。

編纂の経緯

1973年後半、委員たちは資料収集に着手し、1974年4月にはテーマ別に構成することを決定しました。しかし、開業事故や山陽新幹線の博多開業準備などが影響し、当初の計画通りには進まず、結果として開業11周年を迎える1975年12月に発行されることとなりました。

内容の概略

『新幹線十年史』の内容は、開業以来の様々な課題について詳しく説明しています。例えば、初期の故障や速度向上の取り組み、三島駅の設置、岡山への山陽新幹線の延伸、万国博覧会時の輸送対策、新しい設備の導入、環境問題への対応、雪害や公害対策の章も設けられています。

各編の詳細

本書は大きく分けて8つの編成から構成されています。通史に当たる第1編では、新幹線の誕生から10年間の主要な出来事を振り返ります。第2編の管理運営では、組織や経営計画、職員の労働や厚生福祉についてまとめられています。

輸送力増強をテーマにした第3編では、営業開始から速度向上、岡山開業までの過程が詳述されています。第4編は保安対策であり、初期から後期までの保安体制の整備に関する章が設けられています。

さらに第5編では、防災対策に焦点が当てられ、雪害や地震といった自然災害への対応策が検討されています。第6編である近代化では、検修や保守の近代化が議論され、第7編の開発技術の導入では、新たな技術の取り入れ方が詳述されています。そして第8編は環境保全について取り上げており、公害問題の経緯やその対策について触れられています。

書誌情報と補足

この書籍は、797ページにわたる豊富な情報が詰め込まれ、編集は日本国有鉄道新幹線総局によるものです。また、巻末には年表や推移表も収録され、記録としての価値が高いものです。

『新幹線十年史』は、鉄道史や交通の発展に興味がある方にとって、なくてはならない参考書となるでしょう。

もう一度検索