新日本文学会

新日本文学会の歴史と影響

新日本文学会は、1945年から2005年まで運営された日本の文学者による職能団体です。その誕生は、日本の敗戦を機に旧プロレタリア文学運動に関わった作家たちが、戦争中の言論弾圧から解放され、新しい文学の可能性を探ろうとしたことに起因します。1945年12月、蔵原惟人や中野重治、宮本百合子といった文学者の呼びかけにより、創立大会が開催されました。この時点では、戦争に加担しなかった文学者を発起人として選出したため、1950年代後半には戦争責任を巡る批判が生じました。

当初、志賀直哉や野上弥生子ら著名な作家も賛助会員として参加していましたが、天皇に対する態度の違いなどから意見が対立し、志賀直哉は賛助会員を辞退するという事態に至りました。このような内部の対立が、広範な文学者を集めるには至らず、会の基盤を脆弱にしました。

新日本文学会は、雑誌『新日本文学』を通じて新たな文学運動を展開しました。初刊号に掲載された宮本百合子の作品は、戦時中の抑圧文学に対して新しい民主主義文学の創造を訴え、多くの新たな書き手が参加を表明しました。戦前の学生運動に連なる野間宏や労働者出身の小沢清、さらには評論家の平野謙や本多秋五が集まり、次第に新しい文学の芽生えとなりました。

意見の対立と共産党との関係

1950年には、共産党が排除された「五〇年問題」が影響し、新日本文学会は内部に対立を抱えました。一部のメンバーは雑誌『人民文学』を立ち上げるも、すぐに廃刊となり、ほとんどが新日本文学会に戻りました。しかし、その動きは日本共産党の影響を排除しようとする均一な流れを生むこととなり、会の運営に深い影響を与えました。

特に1954年、編集長の解任問題も党の介入と解釈されるようになり、この見解が多数を占めることで新日本文学会と共産党の関係はさらに緊迫化しました。1960年代の安保闘争や共産党の新綱領問題は、会と党との意見の相違を明確にし、1964年の第11回大会ではこの対立が決定的となります。

解散とその後の活動

新日本文学会は共産党との関係を断ち、批判的立場で活動するようになりましたが、組織力は次第に衰退していきます。社会運動との連携や国際的な活動を試みましたが、会員の高齢化や雑誌『新日本文学』の発行頻度の低下が問題となりました。最終的に2005年に解散し、議長は針生一郎が務めました。

また、会の一環として文学学校が1953年に設立され、後に独立した文藝学校へと発展しました。 専門的な講師陣を迎え、多くの著名な作家を輩出したことは、新日本文学会の重要な業績の一つといえるでしょう。

新日本文学会の歴史は、戦後の日本文学の形成に大きな影響を及ぼしました。文学者たちの活動を通じて、新たな思想や表現が生まれ、今後の文壇にも強い足跡を残しました。

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