新相馬節

新相馬節

概要

福島県相馬地方に伝わる「新相馬節（しんそうまぶし）」は、地域の豊かな民謡を土台としつつ、比較的新しい時代に編纂された楽曲です。これは、相馬の地に古くから根ざした複数の伝統的な旋律やリズムを組み合わせることで生み出されました。単なる継承にとどまらず、既存の民謡を再構成した点がこの曲の特徴と言えます。

成立の経緯

新相馬節の誕生は、第二次世界大戦後の復興期に遡ります。この時期、相馬市にゆかりのある堀内秀之進氏が、この民謡の創出に重要な役割を果たしました。堀内氏は、相馬地方に伝わる「相馬草刈唄」を主たる基盤とし、さらに宮城県から福島県にかけて広く親しまれていた「石投げ甚句」の要素を取り入れて編曲を行いました。このように、異なる民謡の持つ特色を融合させることで、新相馬節独自の調べが形作られました。

全国的な普及

堀内秀之進氏の手によって編曲された新相馬節が全国的に知られるようになったのは、著名な民謡歌手、鈴木正夫氏の存在抜きには語れません。鈴木正夫氏は、その傑出した歌唱力と、楽曲に新たな生命を吹き込むような独特の節回しで新相馬節を歌い、多くの人々の心を捉えました。彼の歌声はラジオなどを通じて日本各地に届けられ、これにより新相馬節は相馬地方の枠を超え、国民的な民謡として広く認知されることとなったのです。

相馬の民謡文化とのつながり

新相馬節が生まれた相馬地方は、古来より多様な民謡が息づく土地です。相馬野馬追に代表される文化や地域の暮らしの中から、様々な歌が生まれ、受け継がれてきました。新相馬節の根幹をなす相馬草刈唄や石投げ甚句も、こうした相馬の豊かな民謡群の一部です。また、羽黒山に伝わる「羽黒節」など、他の相馬地方の民謡も、新相馬節の形成に影響を与えた可能性が考えられており、この曲が相馬の民謡文化全体と深く結びついていることを示しています。新相馬節は、こうした地域に根差した伝統を踏まえつつ、新たな創造を加えることで生まれた、まさに相馬地方の文化的な活力の象徴と言えるでしょう。

結び

複数の民謡の要素を統合するという手法で生み出された新相馬節は、戦後の混乱期を経て、人々に希望と共感をもたらす楽曲となりました。現代においても、この曲は相馬地方を代表する歌として、地域のアイデンティティを形作る重要な要素の一つであり続けています。また、全国の民謡愛好家によっても歌い継がれており、相馬の歴史や精神を伝える楽曲として、その価値は今なお失われていません。

より詳しい情報については、仲井幸二郎氏の著書『口訳 日本民謡集』や、相馬市が公開している相馬民謡に関する資料などを参照することが推奨されます。

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