方徴

方徴（ほう ちょう、1349年 - 1380年）は、明朝初期に活躍した官僚であり、字は可久と称しました。彼の出身は興化軍莆田県です。

科挙に合格後、方徴は刑科給事中という役職に任じられ、その才能を発揮し始めました。ある時、洪武帝が後苑で遊んでいる際に、方徴は近侍として詩を詠み交わす機会を得ました。この時、洪武帝は方徴に老母がいることを知り、彼に白金を賜り、駅伝を利用して帰省させたという逸話が残っています。これは、洪武帝が方徴を信頼していたことを示すエピソードと言えるでしょう。

その後、方徴は南京に召還され、監察御史に転任しました。さらに懐慶府知府として地方へ赴任しましたが、その志は非常に高く、不正を許さない強い意志を持っていました。彼は、直言を憚らず、正しいと信じることは臆することなく進言しました。

懐慶府に在任中、天文の異変があった際、朝廷から意見を求められました。この時、方徴は「空印事件」に関連して、各行省の官吏が重罪に処せられたにもかかわらず、河南参政の安然と山東参政の朱芾が、逆に布政使へと昇進しているという不公正な人事が行われていると指摘しました。方徴は、賞罰が公平ではないことを批判し、時の政治を厳しく糾弾したのです。これは、彼の正義感と勇敢さを物語るエピソードと言えるでしょう。

しかし、彼の直言は、結果的に彼の身を滅ぼすことになります。1380年（洪武13年）、方徴は胡惟庸の獄に連座して逮捕され、南京に連行されました。そして、最終的には処刑されてしまいます。彼の死は、明朝初期の政治における権力闘争の犠牲となったことを示唆しています。

方徴の生涯は、明朝初期の官僚が直面した困難と、政治の混乱を象徴しています。彼の剛直な性格は、洪武帝に重用される一方で、結果的に命を落とす原因となりました。彼は、正義を貫こうとしたがために、悲劇的な結末を迎えた人物として歴史に名を残しました。

参考文献には『明史』巻139 列伝第27が挙げられています。この資料は、方徴の生涯についてより詳細な情報を知る上で重要な手がかりとなるでしょう。

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