方程式もの

方程式ものとは

方程式ものは、トム・ゴドウィンの短編SF小説『冷たい方程式』を起源とする一連のSF作品を指す。これらの作品は、密航者が宇宙船に現れることで主人公たちが直面する道徳的及び感情的な葛藤を描いている。

『冷たい方程式』の概要

『冷たい方程式』では、宇宙船の操縦士である主人公が、予期しない形で密航者の少女を乗せてしまう。宇宙船は目的地へ到着するための燃料をギリギリまで節約して航行しているため、密航者が加わることで燃料不足に直面する。主人公は深い悲しみを抱えながらも、宇宙船の安全のため少女をエアロックの外に放り出す決断を下す。この非情な結末は、読者に強い衝撃を与え、多くの議論を呼んだ。

文化的影響と派生作品

ゴドウィンの作品以降、「密航者は排除すべし」という命題をもとに様々な作品が発表され、その多くは短編という形を取る。読者の中には、主人公が少女を救うための別解を望む声が多く、これに応じて多様な派生作品が展開された。これらの作品では、主人公と密航者の運命が異なる形で描かれ、さまざまな解決策が提案される。

基本設定

方程式ものにおける基本的な設定は以下の通りである。
1. 主人公は少数の宇宙船クルーである。
2. 宇宙船には目的地に到達する使命がある。
3. 物資は必要最小限に限られ、航行を行う。
4. 密航者が発生し、計算上到達が困難になる。
5. 主人公たちは人道的なジレンマに直面する。
6. 物語には一定の解法が提示される。

ただし、作品によっては密航者の存在ではなく、酸素漏れなどの別の要因が原因となって問題が発生することもある。これらの作品の多くは、ゴドウィンの悲劇的な結末を背景にしつつ、異なる結末を模索する傾向がある。

代表的な作品

方程式ものの中には、多くの有名な作品が含まれている。例えば、アーサー・C・クラークの『破砕の限界』や、ジェイムズ・パトリック・ケリーの『恐竜たちの方程式』などがある。また、日本国内でも、石原藤夫や筒井康隆などによって同様のテーマが展開され、さまざまな短編が書かれている。特に『解けない方程式』などは、日本SFにおける方程式ものの先駆けとも言える。

パロディ作品

方程式ものの要素を取り入れたパロディ作品も多数存在する。特に、ストーリー展開の面白さを重視した作品が多く、「解」を示さない随筆やコメディ的な要素をもった作品も登場している。これらの作品は、一般的な方程式ものの枠組みを借りながらも、ユーモアや軽妙さを加えたユニークな内容となっている。

方程式ものは、SFというジャンルにおける倫理的課題や人道的選択について、読者に深い考察を促す重要な作品群であり続けるといえる。

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