施工図:建築現場を支える詳細図面
建築物を建設する上で、設計図は全体像を示す重要な資料です。しかし、設計図だけでは現場での具体的な施工は困難です。そこで必要となるのが、設計図を基に作成される
施工図です。
施工図とは?
施工図とは、設計図を元に、実際の
建築現場の状況や建具、設備機器などの収まりを反映させた、より詳細な図面のことです。設計図が建物の概要を示すのに対し、施工図は現場で働く職人さんたちが、
建築物を正確に造り上げるための具体的な指示書として機能します。尺度は、設計図で一般的に使用される1:100よりも詳細な情報が必要となるため、1:50や、場合によっては原寸図が用いられます。
鉄骨構造、建具、昇降機、家具、住宅設備などの製作図とは明確に区別され、それらの図面と連携しながら、現場での施工を円滑に進めるための情報を提供します。建設現場で働く職人にとって、施工図はなくてはならない存在と言えるでしょう。
施工図の種類と内容
施工図には様々な種類があり、それぞれが
建築における特定の工程や要素に焦点を当てています。主な種類と、それぞれに含まれる情報について見ていきましょう。
1. 躯体図
設計図書の構造図を基に作成され、建物の躯体(骨組み)の出来上がり寸法を示した図面です。主に鉄筋コンクリート造の建物において重要となります。平面図である伏図と、断面図から構成され、鉄筋の配置や型枠の形状などは、別途、施工計画図や製作図として扱われることが多いです。鉄骨造の場合は、工場で製作されることが多いため、現場での施工は限定的となり、製作図が中心となります。
2. 平面詳細図
設計図書の平面図に、より詳細な寸法や情報を加えた図面です。設計図書にも平面詳細図は存在しますが、施工図の平面詳細図は、現場の状況や他の図面との整合性を考慮して、さらに詳細な情報が追記されます。
建物内の設備
配管(給水、排水、ガス、空調など)の位置やルートを示した図面です。梁や床を
配管が貫通する箇所は、スリーブ図として、貫通処理の方法や補強が必要な位置、径などが図示されます。
4. プロット図
設備機器の設置位置や、
電気スイッチ、コンセントなどの
レイアウトを示した図面です。設計図書の平面図、天井伏図、展開図などに記載されている情報を基に作成されます。
5. 割付図
内装や外装の仕上げ材の割り付けを決めるための図面です。デザイン性や既製品の標準寸法などを考慮して、最適な割り付けを決定するために使用されます。
施工図の重要性
施工図は、設計図を現実の施工に結びつけるための重要な役割を担っています。正確で詳細な施工図がなければ、施工ミスや手戻りが発生し、工期の遅延やコスト増加につながる可能性があります。そのため、施工図の作成には高い精度と専門知識が求められます。
まとめ
施工図は、設計図を基に、現場の状況を反映した詳細な図面であり、
建築工事の円滑な進行に不可欠です。それぞれの図面が持つ情報を理解することで、
建築のプロフェッショナルだけでなく、
建築に関わるすべての人にとって、より深い理解が得られるでしょう。