旅情

映画『旅情』解説

『旅情』（りょじょう、原題: Summertime）は、1955年に公開されたイギリス・アメリカ合作の恋愛映画です。アーサー・ローレンツの戯曲『カッコウ鳥の頃』を原作とし、名匠デヴィッド・リーンが監督を務めました。主演はキャサリン・ヘプバーンとロッサノ・ブラッツィ。ヴェネツィアを舞台に、一夏の恋が織りなす切ない物語が展開されます。

あらすじ

オハイオ州アクロンに住む独身女性ジェーン・ハドソンは、長年憧れていたヴェネツィアへの旅行を実現させます。しかし、華やかな街の雰囲気に馴染めず、孤独を感じていました。そんな中、骨董品店の店主レナート・デ・ロッシと出会い、惹かれ合います。

ジェーンはレナートとの恋に落ちますが、彼は妻と別居中であるものの、既婚者でした。真実を知ったジェーンは悩みますが、レナートへの想いを断ち切ることができません。短い間でしたが、二人はヴェネツィアで情熱的な日々を過ごします。

しかし、ジェーンはいつまでも続くことのない関係だと悟り、帰国を決意します。駅のホームで、ジェーンはレナートとの別れを惜しみつつ、ヴェネツィアを後にするのでした。

みどころ

ヴェネツィアの美しい風景: 映画全体を通して、ヴェネツィアの街並みが美しく描かれています。サン・マルコ広場、運河、ゴンドラなど、ヴェネツィアの魅力的な風景が、ジェーンの心情と重なり合い、物語をより一層引き立てます。
キャサリン・ヘプバーンの名演: 主演のキャサリン・ヘプバーンは、孤独な女性ジェーンの心の機微を繊細に演じきっています。恋に落ちる喜び、相手の事情を知って苦悩する姿など、彼女の表情豊かな演技は観る者の心を捉えます。
切ないストーリー: 短い夏の恋は、永遠に続くものではありません。ジェーンとレナートの恋は、最初から終わりが見えているからこそ、より切なく、美しいものとして描かれています。

映画の背景

原作戯曲: 原作はアーサー・ローレンツの戯曲『カッコウ鳥の頃』です。映画では、戯曲のテーマである「孤独」や「愛」がより深く掘り下げられています。
デヴィッド・リーンの演出: デヴィッド・リーン監督は、壮大なスケールの作品を数多く手がけていますが、『旅情』では、ヴェネツィアの風景を効果的に使い、登場人物の感情を繊細に表現しています。
音楽: 主題歌「Summertime In Venice」は、映画の雰囲気にぴったりで、当時大ヒットしました。

映画が描くもの

『旅情』は、一夏の恋を通して、人間の孤独や愛、そして人生の儚さを描いた作品です。主人公ジェーンの姿を通して、私たちは自分自身の人生について深く考えさせられます。

この映画は、ヴェネツィアの美しい風景、キャサリン・ヘプバーンの名演、そして切ないストーリーが一体となり、観る者の心に深く残る名作として、今もなお愛され続けています。

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