日朝寺 (上越市)

日朝寺（にっちょうじ）

新潟県上越市寺町に位置する吉祥山日朝寺は、日蓮宗の由緒ある寺院です。その歴史は鎌倉時代の末期にまで遡ります。旧本山は村田妙法寺、法縁は通師・堀之内法縁に属しており、古くからこの地で信仰を集めてきました。

歴史

日朝寺の創建は、文永11年（1274年）と伝えられています。この年、佐渡流罪を許されて本土へ帰還した立正大師日蓮聖人が、越後国を訪れた際に当地に滞在されました。当時、この地には真言宗の称朝寺という寺院があり、その塔頭の一つである吉兆坊には蒙現という学僧がいました。日蓮聖人は蒙現師に法華経の教えを説き、その教えに深く感銘を受けた蒙現師は日蓮宗に改宗し、後に日朝上人と呼ばれるようになりました。日朝上人は自らの坊であった吉兆坊を日蓮宗寺院として改め、これが日朝寺の開基となったとされています。

その後、日朝寺は戦国時代に入り、越後国を治めた上杉家の庇護を受けます。特に、戦国の名将として知られる上杉謙信公も、この寺院との関わりが深かったと伝えられています。しかし、慶長3年（1598年）、豊臣秀吉の命により上杉景勝公が会津若松へ移封されると、日朝寺もこれに従って会津へ移り、さらに慶長6年（1601年）に米沢へ再移封された際にも随行したと伝えられています。この移転により、かつて日朝寺があった故地の寺院は一時的に廃寺となり、荒廃する時期を迎えることになります。

江戸時代に入り、ようやく故地での再建の機運が高まります。明暦元年（1658年）、村田妙法寺の第20世貫首であった日鋭上人によって、かつて日朝寺があった跡地に寺院が再建されました。日鋭上人はこの再建事業を主導し、中興開山として日朝寺を再び興隆させました。この再建以降、日朝寺は上越の地で再び日蓮宗の教えを広める拠点としての役割を担うことになります。

境内と見どころ

日朝寺の境内は、長い歴史を感じさせる静かな佇まいを見せています。中心に位置する本堂は、日々の勤行が行われるとともに、寺院の信仰の中心です。

境内の最も有名な見どころの一つが、見事なしだれ桜です。この桜は「日朝寺のしだれ桜」として地元の人々に親しまれ、春の訪れを告げる風物詩となっています。満開時には、滝のように流れ落ちるような美しい枝垂れが空を覆い、境内を華やかに彩ります。開花の時期には多くの観光客や地域住民が訪れ、その優美な姿を楽しんでいます。

また、日朝寺には毘沙門天像が祀られており、「出迎え毘沙門天」という通称で篤く信仰されています。この毘沙門天像には、戦国時代の武将として名高い上杉謙信公との特別なゆかりがあると伝えられています。上杉謙信公が深く信仰していたとされる「泥足毘沙門天」は、戦勝祈願や出陣の際に謙信公がその足元の泥を拭ったことからそう呼ばれるようになったという逸話がありますが、この泥足毘沙門天は、日朝寺に祀られている毘沙門天像から分身を勧請して建立されたものであると伝えられています。この伝承は、日朝寺が上杉謙信公にとっても重要な信仰の場所であったことを示唆しており、歴史ファンにとっても興味深い点です。

交通アクセス

日朝寺へのアクセスは比較的容易です。えちごトキめき鉄道妙高はねうまラインの高田駅が最寄り駅となります。高田駅からは西方向へ向かい、徒歩でおよそ5分程度で寺院に到着します。駅から近く、気軽に立ち寄ることができるのも魅力の一つです。

まとめ

吉祥山日朝寺は、日蓮聖人によって開かれた古刹であり、上杉家の移封に伴う廃寺という苦難を乗り越え、江戸時代に再興された歴史を持ちます。地域のシンボルである美しいしだれ桜や、上杉謙信公ゆかりの「出迎え毘沙門天」は、寺院が持つ豊かな歴史と文化を今に伝えています。上越市を訪れた際には、ぜひ一度足を運び、静寂の中で歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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