日本とシリアの関係

日本とシリアの関係は、1953年12月に国交が樹立されたことに始まります。日本が国際社会に復帰した直後であり、両国間の関係は、その後、着実に発展を遂げてきました。1954年には在シリア日本国公使館が、1958年にはダマスカスに総領事館が開設されました。この総領事館は、シリアがエジプトと合併し「アラブ連合共和国」となった際に、公使館が廃止された代替として設置されたものです。しかし、エジプト主導の連合体制に対しシリアが反発し、1961年に連合を離脱。これにより、日本との外交関係は復活し、総領事館に代わり公使館が再開されました。その後、1962年には公使館が昇格し、在シリア日本国大使館が設置されました。

一方、シリア側は1978年12月に駐日シリア大使館を開設し、相互に大使館を設置することで、両国関係はさらに緊密なものとなりました。

ゴラン高原への自衛隊派遣

1996年から2013年1月までの間、第四次中東戦争後のイスラエルとシリアを隔てるゴラン高原に、自衛隊が派遣されました。これは国際連合平和維持活動の一環として行われたもので、自衛隊の海外派遣としては3回目であり、最長の派遣期間（17年）となりました。しかし、シリア内戦の激化により情勢が悪化し、PKOを終了する初の事例となりました。

シリア 内戦による関係悪化

2011年3月、アラブの春の影響を受け、シリア内戦が勃発しました。内戦が激化した2012年3月21日には、日本はダマスカスの在シリア日本国大使館を閉鎖し、大使館業務は、アンマンの在ヨルダン日本国大使館内に開設された臨時事務所に移されました。また、日本政府は、シリアへの新規支援を見合わせるなど、実質的な経済制裁を実施しました。

さらに、日本は、シリアのアサド大統領が国際社会の信頼を失っているとし、退陣を求める意向を駐日シリア大使に伝えました。2012年6月には、駐シリア日本大使がペルソナ・ノン・グラータに認定され外交官資格を剥奪される一方で、日本もシリア大使をペルソナ・ノン・グラータとして国外退去処分にするなど、両国関係は著しく悪化しました。

2016年7月20日、在シリア日本国大使館臨時事務所は、ベイルートの在レバノン日本国大使館内へ移転。現在、両国は互いの首都に特命全権大使を常駐させていません。

ISILによる日本人拘束事件

2014年、ISILの実効支配下にあったアレッポで、2名の日本人が拘束され、2015年1月に処刑されるという痛ましい事件が発生しました。この事件は、両国関係に更なる影を落としました。

外交関係

シリア内戦の影響で、両国間の往来はほとんど途絶えています。2011年2月以降の要人往来は、2012年に特別に訪日したシリア国民評議会議長に限られています。それ以前は、日本側は2011年2月に政府代表がシリアを訪問、シリア側は同年1月に大統領補佐官が日本の外務大臣を表敬訪問したのが最後です。

しかし、日本はシリアの化学兵器廃棄、暴力の停止、政治対話の促進、人道状況改善を目的とした「シリア・フレンズ閣僚会合」に毎年参加しており、シリア情勢の改善に積極的に取り組んでいます。また、人道危機に対しては、クウェートシティで開催される「シリア人道支援会合」にも参加し、シリア及び周辺国への支援を表明するなど、人道支援を継続しています。

経済交流

2012年末までの日本の対シリア開発援助額は2000億円を超えており、シリアにとって日本は有力な開発援助国でした。しかし、内戦の激化により、2012年以降は経済援助を停止し、現在は人道支援のみを実施しています。現在の累計人道援助額は29億ドルを超えています。また、シリア難民を受け入れている周辺国への支援も行っています。

貿易関係は限定的で、2019年のシリアの対日輸出額は5000万円、対日輸入額は15.6億円でした。日本は、シリアのアサド大統領及び関係者に対して、資産凍結などの制裁措置を講じています。

文化交流

シリアには、ダマスカス大学などに日本語教育機関が存在します。また、日本では日本シリア親善協会が設立されており、内戦以前は両国間の文化交流を促進していました。内戦以降は、シリア情勢に関する情報発信を行っています。

難民問題

近年、多くのシリア人が日本に難民申請を行っていますが、難民として認められたのはごく少数に過ぎません。日本は難民認定が非常に厳しい国の一つであり、国際社会からは、シリア難民の受け入れに消極的だと批判されています。UNHCRも日本に対し、シリア難民の受け入れに協力するよう要請しています。

外交使節

過去には、両国間で大使が派遣されていましたが、現在の状況については、前述の通りです。

まとめ

日本とシリアの関係は、国交樹立から長らく友好的な関係を築いてきましたが、シリア内戦により著しく悪化し、現在もその影響が続いています。両国間の交流は限定的であり、人道支援を除いては、ほとんど交流がない状態です。シリア情勢の改善と両国関係の正常化が望まれます。

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