日本の仁義

日本の仁義

『日本の仁義』（にほんのじんぎ）は、1977年5月28日に公開された日本映画で、監督は中島貞夫、主演は菅原文太です。本作は一つのヤクザ組織の内部抗争や外部からの脅威によって崩壊に向かう過程を描いています。東映の「日本3部作」の第2弾として企画され、公開当初から多くの注目を集めました。

あらすじ

物語は大阪を舞台に始まります。夕刊紙記者の関は、阪鉄の社長・稲田が同性愛者であることを隠し、若い男性歌手を愛人にしているというスキャンダル記事を執筆します。しかし、阪鉄が重要な広告主であるため、原稿は没にされてしまいます。納得できない関は、行きつけのナイトクラブで酔っぱらい、その原稿を落としてしまいます。この内容を偶然耳にしたクラブのママ・春美は、ヤクザ・木暮にこの情報を伝え、須藤組が稲田を脅迫するきっかけとなります。

同時に、全国に傘下団体を持つ巨大ヤクザ組織「千田組」が西日本に進出し、新宮会系の組織と抗争を繰り広げます。代議士・江尻は事態を収拾するため、新宮会会長・新宮に対して引退を迫ります。外見上は中堅建設会社の社長である新宮は、江尻の要求に応え、須藤を新宮会の二代目会長に擁立します。

須藤は阪鉄をさらにゆすり、特に新梅田駅での地下街拡張工事に関与することになりますが、表向きは強い影響力を持たない新宮は、徐々に須藤組との接触を避け始め、二人の関係は緊張していきます。この間に、関は須藤組の成長を知り、木暮との友情を育みながら情報を提供します。

千田組幹部は須藤組を割くため、様々な工作を仕掛け、また須藤組と関東系組織との兄弟盃が流れたことで孤立化が進行します。新宮会に所属するヒットマン・高森が出所後、千田組からの報復を恐れ、大橋組に助けを求めますが、手違いから彼は命を落とします。この事件を引き金に抗争が激化し、倉敷の拠点が壊滅します。須藤は援護に向かいますが、大阪府警の目が厳しく、行動できずに戻ります。

さらに、須藤組は足下をすくわれ、逮捕者が増加します。抗争の末、須藤は破門され、関の進言を受けて千田組の法要を襲撃する計画を立てますが、その計画は木暮の反発で瓦解します。須藤はその後、覚醒剤の影響で判断力を失い、暴走を続けます。

やがて須藤は木暮を食事に誘い、心を入れ替えたかのように見せかけますが、実際には敵の手によって命を奪われます。新宮はこの事件を利用して須藤を責めますが、関の口から真相が明らかにされます。抗争はさらに激化し、最後には千田組との対峙で多くの組員が命を落とし、組織は崩壊の一途を辿ります。最終的に新宮の事務所に立てこもった者は機動隊に射殺され、抗争は大阪に広がります。

出演者と制作背景

本作のキャストには、豪華な役者陣が揃い、菅原文太、岡田茉莉子、千葉真一などが特に注目されます。中島監督は本作を制作するにあたり、慌ただしい流れの中で脚本を用意し、菅谷政雄という実在の人物にインスパイアを受けていたとされています。

評価

興行成績は賛否があり、『映画年鑑』1978年版では「失敗した」との記載もありましたが、批評家からは大作としての挑戦が評価される場面もありました。特に豪華キャスティングと、男たちのドラマが描かれている点が、観客に印象を与えました。

『日本の仁義』は、ヤクザ映画の中でも特に迫力のある作品であり、リアルな人間模様とドラマを展開させることで、時代の変化を象徴する映画といえるでしょう。

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