日本の鋸

日本の鋸（のこぎり）

日本の鋸は、主に木工や木造建築で使われる伝統的な工具です。ヨーロッパなどで一般的な「押ノコ」とは異なり、引いて切る「引きノコ」であることが最大の特徴です。この構造により、刃を薄くすることができ、より効率的で狭い切断面を実現しています。しかし、引く動作では体重をかけにくいため、技術と熟練が求められます。

日本の鋸の特徴

引きノコ: 刃を引くことで切断します。
薄い刃: 切断抵抗が少なく、美しい切断面が得られます。
効率的な切断: 細かい作業や精密な切断に適しています。

世界での普及

日本の鋸は、その高い性能から海外でも評価されています。特にアメリカへの輸出が多く、近年ではヨーロッパへの輸出も増加しています。これらの鋸は、主に兵庫県三木市に近い神戸港から出荷されています。

主な種類

日本の鋸には、用途に応じて様々な種類があります。

1. 胴付鋸（どうづきのこ）/胴突鋸（どうづきのこ）
刃の背が金属で補強された片刃の鋸です。精密な切断に使われます。

2. 両刃鋸（りょうばのこ）
鋸板の両側に刃がついている鋸です。片方は木目に沿って切る「縦挽き（たてびき）」用、もう片方は木目を横切って切る「横挽き（よこびき）」用です。

3. 畦挽（あぜびき）
小型の両刃鋸で、平面から切り込むことができます。刃が半月状にカーブしているのが特徴です。

4. 回し引き（まわしびき）
曲線切りに適した細い鋸で、ヨーロッパのキーホールソーに相当します。

5. 替え刃（かえば）
刃の部分を交換できる鋸で、経済的です。

6. 大鋸（おが / おおが）
動力鋸が導入される以前に使われていた大型の縦挽き鋸です。2人一組で使い、一人が上に、もう一人が下に立って作業を行います。また、「だいぎり」と読む場合は、2人用の横挽き鋸を指すこともあります。

7. 前挽き（まえびき）
動力鋸が導入される以前に使われていた1人用の縦挽き鋸です。「前挽大鋸（まえびきおが）」や「木挽鋸（こびきのこ）」とも呼ばれます。

歴史と評価

古代日本では、鋸は「ノホキリ」と呼ばれていました。19世紀初頭には、ロシア人ヴァシーリー・ゴロヴニーンが著した『日本幽囚記』で、日本の鋼製品とともに鋸が高く評価されています。ゴロヴニーンは「日本の鋸は非常に良くて、どんな硬い木からも非常に薄い板をひける」と記しており、当時の日本の鋸の技術の高さを物語っています。

伝統工芸としての鋸

地域によっては、伝統工芸として鋸が作られています。例えば、兵庫県三木市の「三木金物」や、木造船用として発達した千葉県南部の「房州鋸」などが有名です。

備考

日本の鋸は、その優れた性能と独特の構造により、海外でも広く知られるようになりました。
Wikipediaでは、日本語だけでなく欧米を中心に11の言語で日本の鋸に関する項目が存在しています。

関連情報

Japanese carpentry（日本の木工）
近江甲賀の前挽鋸製造用具及び製品
外部リンク
nokogiri 鋸 - Japanese Architecture and Art Net Users System
収蔵品1：日本の大工道具 - 竹中大工道具館
「のこぎりができるまで」 - （全15分） 2007年 サイエンスチャンネル

日本の鋸は、その歴史と技術が詰まった、世界に誇るべき伝統的な工具と言えるでしょう。

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