日本ナショナルトラスト

公益財団法人 日本ナショナルトラスト

日本ナショナルトラストは、日本の豊かな自然の景観や、長い歴史の中で育まれた貴重な文化財、あるいは往時の面影を今に伝える歴史的な環境などを、国民一人ひとりの力によって保全し、その価値を活かしながら未来に引き継いでいくことを使命とする公益財団法人です。

この財団の歴史は、1968年（昭和43年）12月25日に「財団法人 観光資源保護財団」として運輸省の監督のもと設立されたことに始まります。その後、時代の変化と共にその活動の広がりを反映し、1992年（平成4年）9月25日には現在の「公益財団法人 日本ナショナルトラスト」へと名称を変更しました。本部は東京都千代田区に置かれています。

その活動の基本的な理念は、イギリスで長年にわたり環境保護に取り組んできた著名な団体「ナショナル・トラスト（The National Trust）」を模範としています。単に国や自治体が進める公共事業としてではなく、国民自らが寄付や資産の贈与といった形で主体的に参加し、国の宝ともいえるこれらの財産を保護し、同時にその価値を多くの方々が享受できるよう利活用していくことを目指しています。

日本ナショナルトラストの活動は多岐にわたりますが、中でも特筆されるものとしては、歴史的に価値のある建造物や文化財を所有し、一般に公開する取り組みが挙げられます。例えば、世界遺産にも登録されている岐阜県白川郷の合掌造民家2棟をはじめ、東京都文京区にある近代和風建築の代表例である旧安田楠雄邸庭園、あるいは京都市左京区に位置する趣深い駒井家住宅など、各地の貴重な歴史的遺産を保全し、その魅力を伝える活動を行っています。

また、ユニークな活動として広く知られているのが、「トラストトレイン」の運行です。これは、国民からの募金によって購入・保存された貴重な鉄道車両を活用した取り組みです。具体的には、往年の蒸気機関車であるC12形164号機や、かつて特急列車などで活躍した旧型客車（スハフ43形2・3号車、オハニ36形7号車）といった歴史的な車両を所有しています。これらの車両は、大井川鐵道株式会社に整備と運行を委託しており、1987年（昭和62年）7月25日からは、これらの4両編成による臨時急行列車として運転が開始されました。この列車は、移動手段としてだけでなく、保存された鉄道文化財そのものを体験できる機会として、多くの人々に親しまれています。

このように、日本ナショナルトラストは、自然景観、文化財、歴史的環境という日本の宝を、国民と共に守り、活かし、そして来るべき世代へと確かに受け渡していくための活動を続けています。なお、類似した名称を持つ公益社団法人日本ナショナル・トラスト協会とは別の組織体であることも付記しておきます。

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