日本人の海外活動に関する歴史的調査

日本人の海外活動に関する歴史的調査

『日本人の海外活動に関する歴史的調査』は、日本が戦後を迎えた1946年に、大蔵省によって編纂された報告書です。この文書では、明治時代初頭から第二次世界大戦にかけての日本人の海外での活動を網羅的にまとめており、特に日本が植民地支配を行っていたアジア地域に焦点を当てています。全11篇37冊という大作で、今なお研究者にとって重要な史料とされています。

成立の背景

1946年9月、大蔵省は「在外財産調査会」を設立し、戦後の日本人の財産に関する調査を始めました。この活動は、敗戦による日本の財政状況を考慮し、連合国との賠償問題への対応を目的としていました。調査会は複数の地域に分かれ、具体的には満洲、朝鮮、台湾、樺太、南洋群島など、さまざまな地域における日本人の財産評価を行いました。

この調査結果をもとに、猪間驥一、鈴木武雄、北山冨久二郎、金子滋男などが中心となり、1947年12月ごろに『日本人の海外活動に関する歴史的調査』が成形されました。1950年までにこの報告書は大蔵省から刊行され、特定の分野に配布されたものの、広く一般には公開されていませんでした。

内容と構成

報告書の序文には「日本及び日本人の在外財産の生成過程は、帝国主義的発展史ではなく、日本人固有の経済行為であり、商取引であり、文化活動であった」と明記されており、当時の日本による植民地支配を肯定する立場が示されています。それにも関わらず、多くの基本的な統計情報や歴史的データが含まれているため、日本の植民地支配の研究において、貴重な資料となっています。

本書は以下のような内容で構成されています。

• - 通巻第1冊: 総論1・2
• - 通巻第2-11冊: 朝鮮篇(第1-10分冊)
• - 通巻第12-17冊: 台湾篇(第1-6分冊)
• - 通巻第18-19冊: 樺太篇(第1-2分冊)
• - 通巻第20-21冊: 南洋群島篇(第1-2分冊)
• - 通巻第22-25冊: 満洲篇(第1-4分冊)
• - 通巻第26冊: 北支篇
• - 通巻第27-28冊: 中南支篇(第1-2分冊)
• - 通巻第29冊: 海南島篇
• - 通巻第30-34冊: 南方篇(第1-5分冊)
• - 通巻第35冊: 欧米篇
• - 通巻第36冊: 総目録

復刻版の刊行

この報告書は当初、限られた関係者にのみ配布されたが、その高い学術的内容は研究者の間で早くから認識され、密かに非公式な形で閲覧されることもありました。1970年代には復刻版の刊行が試みられましたが、著作権に関する法的問題により実現には至りませんでした。しかし2000年には、ゆまに書房から監修が行われた復刻版が発行され、全23巻から成るシリーズとして再び注目を集めました。

まとめ

『日本人の海外活動に関する歴史的調査』は、戦後の日本人の活動を理解する上で欠かせない資料です。植民地支配と日本人の経済活動の関連性を学ぶうえで、研究者にとって貴重な文献であることは間違いありません。

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