日本以外全部沈没

日本以外全部沈没

『日本以外全部沈没』（にほんいがいぜんぶちんぼつ）は、筒井康隆による1973年発表の短編小説で、当時のSF作品『日本沈没』のパロディをテーマにしています。この作品では、日本列島以外の世界が急速に海に沈み、唯一の生存地となった日本に、様々な国々の著名な人々が押し寄せる様子が描かれています。

概要と作品の背景

本作は、当時のベストセラー『日本沈没』に触発されたもので、星新一がタイトルを提案し、小松左京からの許可を得たことで筒井が制作しました。その後、この短編は1974年度に星雲賞短篇賞を受賞しました。授賞式では、小松が冗談交じりに「9年かけて書いた作品があるのに、筒井は数時間で書き上げて賞を持って行った」と語るエピソードも残っています。

小説の内容

物語は、2011年に起きた天変地異が引き金となり、アメリカ大陸やその後の各大陸が次々と沈んでいく様子から始まります。この理不尽な現象によって、大勢の避難民が日本に殺到する中で、生活は困難を極めていきます。日本の人口は急増し、元々中流であった生活が一変、極貧に陥る人々も出現します。

『日本以外全部沈没』では、特に日本人に対して強いアイデンティティ意識が描かれ、外国人に対する偏見や差別がエスカレートしていく様子も重要なテーマとなっています。主人公はその状況の中で、かつての豊かな生活を思い起こしながら、疎外感や孤独感に苛まれます。

また、ストーリーの中では捕鯨禁止が解除されたことでの変化や、日本語学校が繁盛し、英会話学校が衰退していく様子が描かれ、国際情勢の変化もユーモラスに反映されています。愛妻のキャサリンとの関係も、外国人としての訪問者たちとの摩擦によって冷却していく経過が描かれています。

映画化

映画化された『日本以外全部沈没』は2006年に公開され、原作の風刺が踏襲されています。物語は、原作を基にしつつも、映像作品ならではのアプローチが見受けられます。キャストには、小橋賢児や松尾政寿といった俳優が名を連ね、ストーリーを面白おかしく演じています。映画は物語の設定を2014年に置き換えており、タイミングよく観客の共感を呼び起こしました。

受賞と評価

この作品は、短編小説としても、映画としても多くの支持を得ました。特に映画版はユーモアとシリアスなテーマをバランスよく取り入れており、観客に深い印象を残しました。ストーリー展開の中での滑稽な出来事が視聴者の笑いを誘い、同時に社会に対する鋭い視点も提供しています。

書籍および関連メディア

本作は単行本としても複数の版が存在し、特に『日本以外全部沈没 自選短篇集3（パロディ篇）』として再出版されています。また、映画に関連したオーディオブックやサウンドトラックもリリースされ、作品の音楽面でも楽しむことができます。多岐にわたるメディア展開により、筒井康隆のユニークな視点は多くの人々に広まりました。

このように、『日本以外全部沈没』は単なるパロディ作品を超えて、時代を反映した社会の風潮や人間関係のあり方についての考察を提供する重要な文芸作品として位置づけられています。

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