日本国憲法第55条

日本国憲法第55条：国会議員の資格と争訟の裁判

日本国憲法第55条は、国会議員の資格に関する紛争を解決するための重要な規定を定めています。この条文は、国会議員の資格に疑義が生じた場合の裁判権を両議院に与えるとともに、議席剥奪の厳しい要件を定めています。

条文の内容

第55条は簡潔に、「両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。」と規定しています。この条文から以下の点が読み取れます。

裁判権の所在: 国会議員の資格に関する争訟は、衆議院と参議院それぞれが独自に裁判する権限を有します。これは、立法府である国会自身が、その構成員の資格を自ら審査する仕組みです。
議席剥奪の厳格性: 議員の議席を剥奪するには、単なる多数決ではなく、出席議員の3分の2以上の圧倒的な多数による議決が必要です。これは、議員の身分を安易に剥奪することを防ぎ、民主的な手続きを重視する姿勢を示しています。

議員の資格要件

議員の資格には、憲法や国会法で様々な要件が定められています。第55条で扱う資格争訟は、既に議員に就任した後に資格を喪失した場合を想定しています。具体的には、以下の様なケースが考えられます。

被選挙権の喪失: 犯罪などで被選挙権を失った場合
兼職の禁止: 憲法や国会法で禁じられている職務に就いた場合

選挙前における資格審査（選挙無効の訴えなど）とは明確に区別されます。

歴史的経緯

日本国憲法の第55条は、大日本帝国憲法には相当する規定がなく、GHQ草案から継承されています。GHQ草案（Article XLVIX）では、「国会は選挙及び議員の資格の唯一の裁決者たるべし」と規定され、日本国憲法においてもこの考え方が継承されています。憲法改正草案においても同様の規定が確認でき、現在の第55条に至るまで、その基本的な考え方は一貫して維持されてきました。

まとめ

日本国憲法第55条は、国会議員の資格に関する争訟の処理において、両議院に裁決権を与え、議席剥奪には厳格な多数決を必要とすることを定めています。これは、国会の構成員の資格を維持し、民主的な立法府の運営を確保するための重要な規定であり、憲法制定の過程においてもその重要性が認識されてきたことを示しています。この条文は、国会議員の資格問題を扱う上で、公平性と透明性を確保するために不可欠な役割を果たしていると言えるでしょう。また、この条文の解釈と運用は、議会政治の安定性と信頼性を左右する重要な要素であるといえます。

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