日本国憲法第71条

日本国憲法第71条：内閣総辞職後の職務執行内閣

日本国憲法第71条は、内閣総辞職という事態が発生した場合における、内閣の職務継続に関する重要な規定を定めています。この条文は、憲法第5章「内閣」に位置し、政治の安定と円滑な政権移行を確保するための基盤となっています。

条文の内容

第71条は簡潔に、「前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。」と規定しています。「前二条」とは、第69条（内閣不信任決議）と第70条（内閣総理大臣の欠缺、新国会の召集と内閣の総辞職）を指します。つまり、これらの条項に定められた状況、すなわち内閣不信任決議案が可決された場合や内閣総理大臣が欠けた場合などに、内閣は新しい内閣総理大臣が任命されるまで、その職務を継続する義務を負うとされています。

この期間における内閣は、一般的に「職務執行内閣」と呼ばれます。これは、新内閣が発足するまでの暫定的な内閣であり、新たな政策を立案・実行する権限は限定的ですが、国の行政機関としての職務は引き続き履行することが求められます。例えば、予算執行や既存政策の維持・管理などが含まれます。

憲法改正過程における変遷

第71条は、大日本帝国憲法には存在せず、GHQ草案にも同様の規定は見当たりません。しかしながら、憲法改正草案においては、ほぼ同様の規定が既に存在していました。これは、内閣総辞職という事態が発生した場合でも、国家行政の空白期間を避けるために、暫定的な内閣による職務継続が必要とされたことを示唆しています。この点において、憲法改正草案と最終的に制定された日本国憲法第71条は、ほぼ同一の内容となっています。

関連条文との関係

第71条は、第69条と第70条と密接に関連しています。第69条は、内閣不信任決議が可決された場合、内閣が総辞職しなければならないと定めています。第70条は、内閣総理大臣の辞任、死亡、罷免などにより欠けた場合、また、新議会の召集に際して、内閣が総辞職しなければならないと定めています。これらの条文によって引き起こされた内閣総辞職後、第71条が適用され、職務執行内閣がその役割を果たすことになります。

職務執行内閣の重要性

職務執行内閣は、内閣総辞職という政治的な混乱期において、国家行政の継続性を担保する重要な役割を担っています。新しい内閣が組織されるまでの間、国家行政機能の維持、国民生活への影響の最小化など、重要な役割を担うため、その安定的な機能維持は極めて重要です。

結論

日本国憲法第71条は、内閣総辞職後の政治の空白期間を防止し、国家行政の継続性を確保するための重要な規定です。職務執行内閣という仕組みを通して、政治的な移行過程においても、国家行政が安定的に運営されることを保障しています。この条文は、日本国の民主主義と政治安定の維持に貢献していると言えるでしょう。

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