日本女性学会

日本女性学会

設立と目的

日本女性学会（にほんじょせいがっかい）は、人間としての女性を尊重する立場から、女性および関連する多様な問題群を学際的に研究する「女性学」を日本に確立することを目標に、1979年に設立された学術団体である。当時の日本で、女性に関する問題を包括的に学術探究する枠組みが不十分であったため、学問基盤構築の必要性が認識され、発足した。学際的研究とは、社会学、歴史学、文学、心理学、法学など、幅広い分野の知見を統合し、多角的に問題を捉えるアプローチを指す。

「女性学」の探究

学会が確立を目指す「女性学」は、単に生物学的な性差を探るのではなく、社会や文化の中で構築される性別による役割や関係性、そこから生じる経験や課題を深く分析する学問分野である。性別による社会的な役割、文化的な期待、権力構造などが研究対象となり、性別に基づく不平等の構造を明らかにし、より公正で平等な社会の実現に寄与することも重要な目標の一つとされる。この学問は、個々の女性経験に加え、歴史的変遷、国際比較、社会構造全体との関連性の中で包括的に捉えようとする。

主な活動

日本女性学会は、設立以来、「女性学」の研究推進と社会への啓発のため、多岐にわたる活動を展開している。定期的な学会誌やニュースレターを刊行し、研究成果や情報を共有、会員間の情報交換や研究質向上に貢献。研究大会、シンポジウム、各種研究会なども開催し、活発な学術的議論の場を提供する。これらの集まりは、研究者同士が知見を交換し、新たな研究テーマを探る上で欠かせない機会。さらに、学会は学術研究に留まらず、女性に関連する社会課題に対し、学術的な知見に基づいた提言も積極的に行う。選択的夫婦別姓制度や民法改正など、女性の権利や地位向上に関わる政策提言を通じて社会に影響力を発揮しており、研究成果を社会実践に結びつけようとする姿勢を示す。

社会貢献と関連分野

日本女性学会の活動は、日本の学術界における「女性学」の確立・発展に貢献するとともに、女性の視点からの社会提言を通じて、政策形成議論にも影響を与えている。学会の研究テーマは、「ジェンダー研究」や「フェミニズム」といった関連分野と深く繋がっている。「ジェンダー」は生物学的性別（sex）と異なり、社会・文化で形成される役割・関係性を指し、「女性学」で重要視される分析視点。「フェミニズム」は性別差別・不平等に反対し、女性権利拡大・解放を目指す思想・運動。「女性学」は学術基盤を提供し、研究成果で実践に貢献するという相互補完関係にある。

運営体制

学会は、会員の研究活動支援と円滑な運営のため、複数の役員で構成される幹事会を中心に運営されている。学会の代表者は代表幹事と呼ばれ、対外活動や学会運営全般の責任を担う。2015年4月時点の代表幹事は古久保さくら氏だった。運営体制は時期により異なるが、多くの会員の研究活動と運営協力によって支えられている。

今後の展望

少子高齢化、多様化する家族や働き方、技術の進化など、現代社会は絶えず変化しており、女性を取り巻く状況も変化し続けている。学会は変化に対応し、新たな研究と学術的知見に基づく提言を続けることが期待される。国内外の研究機関や関連団体との連携も、今後の活動において一層重要となるだろう。

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