日本教育工学会

日本教育工学会（にほんきょういくこうがっかい、英称：JAPAN SOCIETY FOR EDUCATIONAL TECHNOLOGY）は、教育工学分野における研究者や実務家などが集まり、その発展と社会への貢献を目指して活動する一般社団法人です。その歴史は1984年の設立に始まりますが、法人としての形態は2021年3月に任意団体から一般社団法人へと移行しました。

教育工学という学問分野は、1960年代後半に進められた教育内容の現代化や教育方法の近代化といった、日本の教育改革の流れの中でその重要性を増し、発展を遂げてきました。学習理論や教育機器の開発、教育システムの設計など、多岐にわたる研究が進められる中で、関連する学協会が積極的に活動を行っていました。具体的には、視聴覚教育学会や放送教育学会、電子通信学会の教育技術研究会、またCAI学会（現在の教育システム情報学会）、日本科学教育学会などが活発な議論を展開していました。さらに、日本教育工学協会や日本教育工学振興会、教育工学センター協議会といった組織も、教育工学の普及や振興に寄与しました。これらの多様な学協会における研究活動や交流を経て、教育工学専門の学会設立への機運が高まります。

こうした背景を受け、1979年には日本教育工学会の発足に向けた準備会が組織されました。この準備会には、当時の教育工学分野を牽引していた東洋氏、藤田恵爾氏、星野昭彦氏、菊川健氏、小金井正巳氏、中野照海氏、坂元昂氏らが委員として参加し、設立に向けた具体的な検討が進められました。そして1984年11月、教育工学分野への強い関心と期待を背景に、全国から集まった716名の会員と共に「日本教育工学会」が正式に設立されました。初代会長には、設立準備会から尽力してきた東洋氏が就任しました。

設立以来、本学会は教育工学に関する最新の研究成果の発表と共有、そして会員間の交流を深めるための様々な活動を展開しています。主要な活動の一つとして、教育工学分野における質の高い学術論文を掲載する機関誌『日本教育工学雑誌』を定期的に刊行しています。この雑誌は、査読プロセスを経て掲載される論文を通じて、分野の最先端の研究動向を発信しています。また、より幅広い読者層に向けて教育工学の知識や研究動向を伝えるため、『教育工学研究』や『現代教育工学』といった市販されている専門誌の編集・刊行にも協力しています。さらに、教育工学に関する重要な研究成果や基礎知識をまとめた書籍の出版も支援しており、研究者や教育関係者、学生などが学びを深めるための情報源を提供しています。

加えて、本学会の重要な活動の柱である全国大会は、会員が日頃の研究成果を発表し、活発な議論を行う場として毎年開催されています。特に2019年からは、より多くの研究発表の機会を設け、参加者間の交流や情報共有を一層促進することを目指し、大会の開催頻度を年1回から、春と秋の年2回へと増やしました。これらの活動を通じて、日本教育工学会は教育工学分野の学術的発展に貢献するとともに、その研究成果を社会、特に教育現場へと還元することを目指しています。

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