日本最初のホームページ

日本最初のホームページ

概要

「日本最初のホームページ」とは、日本国内に設置されたサーバから初めて一般に公開されたウェブページの通称です。このページは、1992年9月30日に公開が開始されました。具体的には、茨城県つくば市にあった文部省高エネルギー物理学研究所（現在の高エネルギー加速器研究機構、略称KEK）のサーバ上で、KEKに所属していた森田洋平氏によって作成され公開された「KEK Information」というタイトルの単一ページを指します。現在のウェブサイトのように複数のページで構成されるものではありませんでした。

公開に至る経緯

この歴史的なページが生まれるきっかけは、森田洋平氏が1992年9月にスイスにある欧州原子核研究機構（CERN）を訪問したことにあります。当時CERNでは、ワールド・ワイド・ウェブ（WWW）の概念を生み出したティム・バーナーズ=リー氏が、その研究と世界的な普及を積極的に推進していました。森田氏はリー氏と交流し、日本国内にウェブサーバを設置することの重要性を強く説得されました。

リー氏からの要請に応えるため、森田氏はCERNの端末を借りて、遠隔地にあるKEKのサーバにログインしました。そして、その場でHTMLを用いて「KEK Information」と題したウェブページを作成し、KEKのサーバ上に急いで配置しました。この作業は短時間で行われたため、当時そのファイルが置かれたサーバは、まだHTTPプロトコルに対応した本格的なウェブサーバではなく、既に利用されていたFTPサーバとして機能していました。

ファイル配置後、ティム・バーナーズ=リー氏はCERNの公式ウェブページに、このKEKのページへのハイパーリンクを追加しました。このリンクによって、世界中のウェブユーザーが日本のKEKに存在するこのページにアクセスできるようになり、その存在が国際的に広く知られることとなりました。このハイパーリンクがCERNのページに追加された日付、すなわち1992年9月30日が、「日本最初のホームページ」が世界に向けて正式に公開された日として広く認識されています。

現在の保存状況

公開から四半世紀以上が経過した現在（2017年8月時点の情報に基づく）、この歴史的なウェブページそのものは、株式会社つくばマルチメディアによってデジタルデータとして保存されています。また、当時「日本最初のウェブサーバ」として機能したKEKのFTPサーバ機器本体も、高エネルギー加速器研究機構内にて保存・展示されており、ウェブ黎明期の貴重な遺産として後世に伝えられています。

補足：国内初のHTML文書について

ここで一点補足しておきたいのは、日本で最初に作成されたHTML文書自体は、森田氏による「KEK Information」よりも前に存在していたことです。これは、1992年2月に当時のNTT基礎研究所に所属していた奥乃博氏が作成したものでした。奥乃氏のHTML文書は、社内報や日本国憲法の内容などをマークアップしたものでしたが、作成された時点ではインターネット上のWWWには公開されていませんでした。そのため、技術的には国内初のHTML文書であっても、「日本で最初に公開されたウェブページ」という称号は、森田氏がKEKから公開したページに与えられることになったのです。なお、奥乃氏による初期のHTML文書も、後にWWW上で公開されるに至っています。

もう一度検索