日本社会精神医学会

日本社会精神医学会（にほんしゃかいせいしんいがくかい、英文名称は Japanese Society of Social Psychiatry、略称は JSSP）は、社会精神医学という学術分野の研究推進、進歩、発展、およびその成果の普及を主な目的として活動している専門家による学会です。

社会精神医学とは、精神医学の一分野であり、個人の「こころの健康」に関わる問題を、単に生物学的な側面だけでなく、社会や環境との関連性の中で捉えようとする学問です。疫学的手法や社会科学の手法を取り入れ、疾病の予防や診断、治療、リハビリテーション、さらには精神保健に関連する社会保障制度のあり方まで、幅広いテーマを研究対象としています。この分野は非常に学際性が高く、精神保健学、地域精神医学、精神障害リハビリテーション学、産業精神医学、文化精神医学、司法精神医学といった多様な関連領域との連携の中で探求が進められています。

本学会は、社会精神医学の発展と普及のため、多岐にわたる事業を展開しています。主要な活動としては、研究成果を発表・共有するための研究発表会（学術総会）の開催、学会の公式機関誌の発行、そして社会精神医学に関する最新の学術情報や知見を会員や社会に提供することなどが挙げられます。

学会の歴史は1981年4月1日に始まります。この日、国立精神衛生研究所（現在の国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所）にて第1回学術総会が開催され、学会が正式に設立されました。その後、組織としての体制強化を図り、2012年4月2日には一般社団法人へと移行しています。事務局は設立以来いくつかの変遷を経ており、一般社団法人化当初は東京都渋谷区に置かれていましたが、2020年4月1日からは東京都文京区に所在を移しています。

本学会の公式機関誌は、『日本社会精神医学会雑誌』（英文誌名は Japanese Bulletin of Social Psychiatry）です。この雑誌は、社会精神医学領域における重要な研究論文や論考を掲載し、国内および国際的な学術交流の一助となっています。機関誌の創刊は、学会設立に先立つ1978年（昭和53年）に行われています。

学会運営における理事長は、特定の任期ごとに選出されます。例えば、令和元年度および令和2年度の理事長は水野雅文氏が務めました。

近年における学術総会の開催は、社会情勢の影響を受けることもありました。たとえば、第39回総会は2020年3月26日・27日に福岡国際会議場での開催が予定されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、やむなく中止となりました。続く第40回総会は、2021年3月4日・5日に形式を変更し、オンラインでの開催が実現しました。

本学会は、2021年12月1日時点において、日本学術会議の協力学術研究団体として認められていますが、一方で日本医学会の分科会一覧には登録されていません。

社会精神医学は、精神医学全体の中で、社会との接点を特に重視する分野であり、本学会は関連する他の学術団体、例えば日本精神神経学会や日本神経科学学会などとも連携しながら、その発展に貢献しています。

これらの活動を通じて、日本社会精神医学会は、社会的な視点からこころの健康問題を理解し、解決策を探求するための重要な役割を担っています。

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