日本陸上競技選手権大会男子20キロ 女子20キロ競歩

日本陸上競技選手権大会20km競歩

日本陸上競技選手権大会20km競歩は、毎年2月中旬に開催される、日本の陸上競技界において重要な位置を占める大会の一つです。正式名称の通り、男女それぞれの20km競歩における日本国内のチャンピオンを決定する最高峰の競技会であり、現在の主要な開催地は兵庫県神戸市です。

この大会は、市街地の一般公道を利用して行われるため、同時期に開催される他の日本陸上競技選手権大会の主要種目とは異なり、独立した日程と会場で実施されます。これは、マラソンや男子35km競歩など、公道を使用する他の長距離種目と同様の形式です。

大会の位置づけと選考会

この大会は、その年のオリンピック、世界陸上選手権、アジア大会といった主要な国際競技大会における20km競歩の日本代表選手を選考する上で、最も重要視される大会です。国際陸上競技連盟が定める参加標準記録Aを突破した上で本大会の優勝者となった選手は、日本代表に自動的に内定します。そのため、多くのトップアスリートたちが、この大会での勝利と記録更新を目指して集結します。

歴史的変遷

本大会の歴史は古く、男子20km競歩は1955年の第39回大会から正式種目として実施されました。女子については、当初は10km競歩として1987年の第71回大会より始まり、その後、1999年の第82回大会からは男子と同じ20kmへと距離が変更されています。

開催地は長らく各都道府県による持ち回りでしたが、1989年からは兵庫県神戸市に定着しました。当初、1989年から1993年にかけては、世界陸上選手権を意識した強化策の一環として、神戸市北区にある「しあわせの村」の園内周回コースで、例年8月に開催されていました。しかし、起伏の多いコースと真夏の過酷な暑さが選手の記録向上を阻害するという課題があり、1995年度からは開催時期を1月に変更するとともに、現在の神戸市東灘区六甲アイランド内の周回コース（1周2km）へと会場が移されました。

ただし、1995年は大会開催のわずか4日前に阪神・淡路大震災が発生した影響を受け、急遽2月に千葉市で代替開催されるという異例の事態となりました。六甲アイランドのコースはその後、2010年からは片道1kmの折り返しコースに変更され、2011年からは開催時期が現在の2月に再度調整されました。

コースの特徴

現在の六甲アイランドに設けられたコースは、起伏がほとんどない平坦な走路であることが最大の特徴です。この条件は、競歩選手にとって非常に有利に働き、高速レース展開や好記録の樹立を促します。実際に、2009年時点では男女20km競歩の日本記録がこのコースで樹立されており、2000年の男子20km競歩では、当時の日本歴代記録における上位5位までがこの大会で塗り替えられるという驚異的な記録ラッシュが見られました。多くの選手が自己ベストを更新していることからも、「日本随一の高速コース」として、国内外の選手から高い評価を得ています。

競技種目とジュニアの育成

本大会では、日本陸上競技選手権大会の種目として、男子20km競歩および女子20km競歩が実施されます。これに加え、若手選手の育成と強化を目的とした「ジュニア選抜競歩」も開催されています。

ジュニア選抜競歩には、大会開催年の12月31日時点で20歳未満の選手が参加資格を持ち、高校生だけでなく一般や大学生カテゴリーの選手も出場可能です。この部門は、将来を担うハイレベルな選手の活躍の場となっており、熱戦が繰り広げられます。過去には、ジュニア男子3km競歩やジュニア女子3km競歩が実施された時期もあり、また、2003年には一度だけではありますが、選抜男子50km競歩が行われたこともあります。

特筆すべきエピソード

この大会に関連する感動的なエピソードとして、2007年の能登半島地震の際に六甲アイランドが果たした役割があります。当時、4月に日本陸上競技選手権大会50キロ競歩の開催を控えていた石川県輪島市が被災した際、1995年の阪神・淡路大震災時に本大会が千葉市で代替開催された際の恩義を感じていた兵庫陸上競技協会が、すぐに六甲アイランドを代替開催地として提案しました。これにより、2007年度の50キロ競歩は予定通り4月15日に六甲アイランドで開催され、12年越しの「恩返し」が実現しました。

近年では、2023年の第106回大会において、日テレスポーツ公式YouTubeチャンネルでのライブ配信が行われるなど、メディア露出も増え、より多くの陸上ファンに大会の様子が届けられています。

このように、日本陸上競技選手権大会20km競歩は、日本一を決める戦いであると同時に、国際舞台への登竜門であり、多くの記録が生まれる高速コースでの挑戦、そして若い才能の発掘・育成の場としても、日本の競歩界において非常に重要な大会であり続けています。

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