日比谷焼打事件

日比谷焼打事件とは

日比谷焼打事件（ひびややきうちじけん）は、1905年9月5日、東京の日比谷公園で発生した暴動である。この事件は、日露戦争の講和条約であるポーツマス条約に対する国民の激しい不満と抗議から引き起こされたもので、多くの人々が暴動に参加し、東京の各所で騒乱が生じた。

背景

1905年、日露戦争は日本にとっての大きな勝利をもたらしたが、戦争の長期化は多大な戦費を必要とし、国民の生活を厳しく圧迫していた。日本海軍はバルチック艦隊を撃破し、アメリカのセオドア・ルーズベルト大統領の仲介で、ポーツマスで和平交渉が始まった。しかし、戦争の影響で日本の財政は悪化し、国民には増税が強いられた。このため、講和に対して強い期待感が生まれていた。

ところが、実際の条約内容は多くの期待を裏切るものであった。ロシアは賠償金の支払いを拒否し、日本側は樺太南部の割譲と日本の満洲、朝鮮に対する権利を得ることで妥協せざるを得なかった。国民の間では、もっと大きな賠償金や領土の割譲が求められていたため、条約に対する不満が高まった。

暴動の発生

日比谷焼打事件は、ポーツマス条約が調印される日、つまり1905年9月5日に発生した。この日は、野党の憲政本党の河野広中が主宰する集会が開催され、集まった数万人が賠償金の要求を訴えた。しかし、警察が不穏な動きを察知し、集会の阻止を試みた。これに対し、参加者たちは反発し、日比谷公園の警備を突き破って集会を強行した。

その結果、暴徒と化した群衆は内務大臣官邸や国民新聞社を襲撃し、警察署や交番など市内13か所以上で焼き討ちが行われた。この騒動は瞬く間に広がり、群衆は投石や棍棒によって無政府状態の様相を呈した。これを受けて、政府は戒厳令を発布し、軍を投入して鎮圧にあたった。

事件の影響

日比谷焼打事件の結果、17人の死者、500人以上の負傷者、2000人以上の検挙者を出す事態となった。主催者たちは一旦逮捕されたが、翌年の裁判では無罪が言い渡されるなど、事件は予期せぬ結末を迎えた。この事態は日本の政界にも大きな影響を与え、内閣の総辞職に繋がった。

結論

日比谷焼打事件は、日本史における重要な暴動として位置づけられている。この事件が示したのは、国民の声が政治に及ぼす影響力であり、また、国民の間に広がった不満が暴動という形で噴出した一例である。日本の近代史において、民衆運動の盛り上がりを象徴する出来事となった。

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