日清GoFan

日清GoFan：電子レンジ時代の幕開けを告げた、カップヌードルごはんなる傑作の礎

2009年、日清食品は画期的な加工米飯「日清GoFan」を世に送り出しました。電子レンジでの調理を前提としたカップ入りのご飯は、のちに大ヒット商品となる「カップヌードルごはん」の礎を築いた製品と言えるでしょう。当時、日本の電子レンジ普及率はほぼ100％に達しており、特に若い世代を中心に、電子レンジのみで調理を行うライフスタイルが浸透しつつありました。炊飯器を使用しない単身世帯も増加し、従来の炊飯器による炊飯という概念が変わり始めた時代背景が、GoFan開発のきっかけとなりました。

日清食品は、1975年からカップライスを販売しており、長年の即席食品開発で培った技術を持っていました。従来のカップライスは、チキンラーメンやカップヌードルと同じ瞬間油熱乾燥法を用いて製造されていましたが、GoFanでは全く新しい技術を採用しました。それが、「膨化乾燥技術」です。この技術は、油を使わず高温・高速の熱風で米を膨化させることで、ポン菓子のような軽くてサクサクとした「パフライス」を作り出す画期的なものでした。

発売当初のGoFanは、「五目チャーハン」、「トマトが香るチキンライス」、「スパイシージャンバラヤ」の3種類がラインナップされ、価格は270円に統一されました。その後、「シーフードパエリア」が追加されました。スープで米を炊き込む製法により、米一粒一粒に味がしっかり染み込んでいる点が、商談段階から高く評価されていました。しかしながら、当時の電子レンジ食品市場は年間56億円と、3900億円規模のカップ麺市場に比べて圧倒的に小規模でした。消費者の多くは、従来の湯で調理するカップ麺に慣れ親しんでおり、レンジ調理への抵抗感が強かったため、GoFanは市場での大きな成功を収めるには至りませんでした。

この経験を踏まえ、日清食品はカップヌードルの人気を活用し、新たな戦略を立てます。カップヌードルの味や容器のデザインを取り入れることで、カップ麺市場の消費者層にアプローチするという発想です。そして2010年、「カップヌードルごはん」が発売されました。これは大成功を収め、瞬く間に人気商品となりました。「膨化乾燥技術」は、カップヌードルごはんにも継承され、その品質の高さを支えました。

カップヌードルごはんで得られた成功は、GoFanにも波及効果をもたらしました。カップヌードルごはんのヒットを受け、一部地域ではGoFanへの関心が再び高まり、売れ行きが向上する兆候が見られました。そして2012年、日清食品はGoFanブランド3商品を刷新し、再発売に踏み切ります。これは、市場でのGoFanの潜在的な可能性を改めて認識した結果と言えるでしょう。GoFanは、市場環境や消費者の嗜好の変化を反映しきれず、主流となるには至らなかったものの、カップヌードルごはんという新たな成功を生み出す重要なステップとなりました。その挑戦は、電子レンジ調理の加工米飯という新たな市場を切り開く試みとして、食品業界の歴史に刻まれています。

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