日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票

日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票

「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票」は、1996年（平成8年）9月8日に沖縄県において実施された、極めて歴史的な住民投票です。この投票は、日本の都道府県という広範な地域で行われた最初の事例として、その後の地方自治や住民意思表示のあり方に大きな影響を与えました。

この県民投票が実施される決定的な契機となったのは、前年、1995年（平成7年）9月4日に発生した沖縄米兵少女暴行事件です。この痛ましい事件は、長年にわたり沖縄県民が抱えてきた、在日米軍基地の過重な集中による負担や、米軍人・軍属の事件・事故に対する日米地位協定の不平等性への不満と怒りを爆発させました。事件発生後、沖縄県内では日米地位協定の見直しと、県内に集中する米軍基地の整理・縮小を求める声がかつてないほど高まり、県民の総意を示す手段として、住民投票の実施が強く求められるようになりました。

こうした背景のもと、県議会の議決を経て県民投票の実施が決定されました。投票の対象となったのは、満20歳以上の沖縄県民です。投票に先立つ告示日は1996年8月29日、そして投票日は同年9月8日と定められました。投票では、「日米地位協定の見直し」と「県内の米軍基地の整理縮小」という二つの主要な論点に対する県民の賛否が問われました。

投票結果は、沖縄県民の強い意思を明確に示すものとなりました。開票の結果、これらの論点に対し、実に89パーセントという圧倒的な多数の県民が賛成の意思表示を行いました。この高い賛成率は、単なる多数決を超え、沖縄県民が基地問題と地位協定に対して抱く共通の認識と、現状を変革したいという強い願望の表れとして受け止められました。残りの約11パーセントは反対または白票でした。

この県民投票の結果は、沖縄県だけでなく、日本政府や米国政府、そして国内外のメディアに大きな衝撃を与えました。県民の明確な意思が示されたことで、日米地位協定や沖縄の基地問題は、単に外交や安全保障上の問題としてではなく、沖縄県民の基本的人権や自己決定権に関わる問題として、より重い意味を持つこととなりました。また、この投票は、地方自治体における住民直接請求や住民投票といった制度が、住民の意思を国政レベルに影響を与える可能性を持つことを示す重要な事例となり、その後の日本の住民投票制度や地方自治のあり方に関する議論にも一石を投じました。

日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票は、沖縄の基地問題の歴史における重要な転換点の一つであり、県民が自らの置かれた状況に対し、民主的な手続きを通じて明確な意思を表明した画期的な出来事として、今日までその意義が語り継がれています。その結果は、現在に至るまで続く沖縄の基地負担軽減を求める運動の根幹をなすものの一つとなっています。

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