日系ドミニカ人

日系ドミニカ人とは

日系ドミニカ人とは、日本人の血を引くドミニカ共和国の住民を指します。彼らのルーツは、第二次世界大戦後の日本の混乱期に、国策としてドミニカ共和国へ移住した人々とその子孫にあります。この移住は、戦後の失業問題解決策として計画されましたが、その実態は過酷なものでした。

移住の背景

第二次世界大戦後、日本は外地からの引揚者によって深刻な失業問題に直面していました。当時の国際情勢から、アメリカやオーストラリアなどの国々への移民は困難でした。そこで注目されたのが、中立国であった中南米諸国です。

1956年、日本とドミニカ共和国の間で、農業開発を目的とした日本人移民受け入れの二国間条約が締結されました。日本政府は、破格の好条件を提示し、全国から多くの応募者を集めました。鹿児島県出身者を中心とする249家族、1319人が厳しい審査を経てドミニカ共和国へ移住しました。

移住後の過酷な現実

しかし、実際に移住者たちに与えられた土地は、約束された面積の3割程度しかなく、岩や石が転がる荒地でした。さらに、塩害や慢性的な水不足に悩まされ、近代的な水利設備もありませんでした。ドミニカ共和国政府は土地の所有権すら認めず、移住者たちは絶望的な状況に追い込まれました。特にハイチとの国境付近の入植地は、監視下に置かれ「地獄の一丁目」とまで呼ばれました。

この原因は、日本政府が移住者に耕作権しか与えないという条約内容を、募集要項に記載していなかったことにあります。また、当時の駐ドミニカ共和国大使も、現地の水問題や塩害の実態を隠蔽していました。ドミニカ共和国政府も、日系移民を国境警備や荒地開発に利用する意図がありました。

さらに、独裁者ラファエル・トルヒーヨ大統領の暗殺によって国内情勢が混乱すると、日系移民は言葉の壁や現地住民からの差別によって、略奪の対象となり、生活はさらに困窮しました。この時期、多くの自殺者も出ており、この移民政策は「戦後移民史上、最悪のケース」とまで呼ばれました。

帰国と補償への道

1961年、日本政府はようやく移民政策の失敗を認め、集団帰国を実施しました。1963年までに、移住者の8割が帰国するか、南米諸国へ移住しました。しかし、47家族276人はドミニカ共和国に残り、日本政府に対して移住条件の履行を求め続けました。しかし、交渉はなかなか進展しませんでした。

1998年、ようやく新たな土地が提供されましたが、それは以前と変わらない荒地でした。2000年、残留者を中心とする126名が、日本政府に対し国家賠償を求めて提訴しました。その後、集団帰国した人々も加わり、総額約32億円の賠償を求める裁判となりました。

2006年、裁判所は国の責任を認めたものの、除斥期間を理由に賠償請求は棄却されました。しかし、その後、小泉純一郎首相（当時）が謝罪し、全移住者に対して「特別一時金」を支給するという和解案が提示され、和解が成立しました。

また、2023年8月には、ドミニカ政府も補償を受けられなかった45世帯に対し、1世帯あたり約2000万円の補償金を支払うことが明らかになりました。

著名な日系ドミニカ人

* ロバート・ミキイ・タカタ・ピメンテル（ロバート高田） - 駐日ドミニカ共和国大使

まとめ

日系ドミニカ人の歴史は、戦後日本の移民政策の暗部を象徴するものです。彼らは、政府の誤った政策によって過酷な状況に置かれましたが、長年の闘いの末、ようやく補償を受けられるようになりました。この歴史は、私たちが過去の過ちから学び、二度と繰り返さないための教訓となるでしょう。

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