旧日新館 (横手市)

旧日新館は、秋田県横手市城南町に位置する歴史的建造物です。現在も個人住宅として使用されていますが、一部は一般公開されており、その独特な建築様式を間近に見ることができます。木造2階建てで、広さは約280平方メートルです。

来歴

旧日新館は、1902年（明治35年）に旧制横手中学校（現在の秋田県立横手高等学校）に赴任したアメリカ人英語教師、チャールス・C・チャンプリンのために建てられました。当初、チャンプリンは横手町内の旅館に滞在していましたが、日本の家屋に馴染めなかったため、旅館主の小坂亀松が外国人向けの宿泊施設を建設することを計画しました。

建築は地元の棟梁、藤村初五郎が担当しましたが、彼にとって西洋建築は初めての経験でした。そのため、小坂は事前に藤村を東京などに視察に行かせました。設計にはチャンプリンも関わり、彼の出身地であるアメリカ南部の住宅のイメージと、日本の高度な木造建築技術が融合し、他に類を見ない旅館「日新館」が誕生しました。

日新館は外国人旅行者向けの宿泊施設として建設されましたが、実際には横手中学校の外国人教師の住居として使用されることになりました。その後、5人のアメリカ人英語教師が交代で居住し、6人目の教師であるマルチン・M・スマイザーが1933年（昭和8年）に小坂から土地と建物を購入し、自宅としました。

日米関係が悪化し、太平洋戦争が始まると、スマイザーの教え子であった弁護士が彼の身を案じ、土地を含む旧日新館を日本人に相続させる旨の遺言を作成させました。1955年（昭和30年）にスマイザーが80歳で亡くなると、遺言に従い、彼の助手であった鶴岡タカに譲られました。

タカは相続した旧日新館で裁縫学校「横手和洋裁学院」を開校しました。1963年（昭和38年）にタカが亡くなると、姪の鶴岡功子が学院を引き継ぎました。1974年（昭和49年）には生徒数の減少などを理由に横手和洋裁学院は閉校となり、建物の処分も検討されましたが、その価値を認めた横手市職員の尽力により、旧日新館は1984年（昭和59年）3月10日に秋田県指定有形文化財に指定されました。翌年には保存修理工事が行われています。

現在も旧日新館の一部は鶴岡家が住居として使用しており、残りの部分は無料で公開されています。しかし、建物を次世代に継承していくことが課題となっています。

公開時間・アクセス

公開時間：水曜日 9:00 - 16:00
交通アクセス：
JR奥羽本線・北上線 横手駅からバスで10分、郵便局前バス停から徒歩10分
秋田自動車道・東北中央自動車道 横手ICから車で10分

旧日新館は、横手市の歴史と文化を伝える貴重な遺産です。訪れる際には、その歴史的背景と建築様式に思いを馳せてみてください。

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