旭村 (新潟県中頸城郡)

かつて新潟県中頸城郡に存在した自治体に、旭村（あさひむら）がありました。この村は、明治時代の地方制度の大きな変革期に誕生し、昭和の市町村合併によってその姿を消すまで、約66年間にわたり地域社会を形作りました。

旭村の設立は、1889年（明治22年）4月1日に施行された町村制という全国的な制度改革に端を発します。これにより、それまで個別の集落として存在していた地域が統合され、新たな自治体として組織されることになりました。中頸城郡においてもこの動きが進み、複数の村や新田が集まる形で旭村が生まれました。具体的には、当時の梶村、内雁子村、内雁子新田、山鵜島新田、里鵜島新田、米倉新田、鵜田中新田、高橋新田、和泉新田、山方村、大滝新田、神田町新田、長沢新田、田尻村、六万部村、西ノ島村、八幡新田、坪ノ内新田、そして町田村の一部という、実に19もの地区が一つにまとまって旭村となりました。これらの集落が行政の下に統合されたことで、地域としてのまとまりが強固になり、住民サービスの向上などが期待されました。

旭村は、明治の誕生から昭和の半ばまで存続しましたが、1950年代に進められた「昭和の大合併」と呼ばれる市町村合併の大きな流れの中で、自治体としての歴史を閉じることになりました。1955年（昭和30年）3月31日、旭村は消滅し、その村域は近隣の自治体へと引き継がれることになったのですが、その際に村全体が一つの自治体に吸収されるのではなく、二つの異なる隣接自治体へと分割されるという特徴的な経過をたどりました。

一方の分割領域、すなわち大字梶、大滝新田、下八幡新田、坪野内新田、神田町新田、長沢新田、西野島、町田、六万部、そして田尻と山方を含む合計10地区は、当時同じ中頸城郡に属していた吉川村および源村と合併する道を選びました。この三つの自治体が一つになることで、新たに町として吉川町が誕生し、旧旭村の一部はその新しい町の領域の一部となりました。この合併は、自治体の規模拡大や財政基盤の強化を目指す動きの一環として行われました。

もう一方の分割領域である大字内雁子、内雁子新田、里鵜島新田、鵜田中新田、米倉新田、高橋新田、和泉新田、そして山鵜島新田を含む合計8地区は、同じ中頸城郡に位置していた潟町村に編入されることになりました。これにより、これらの地区は潟町村の一部としてその後の歴史を歩むことになります。

このように、旭村はその存在期間中に二度の大きな地方制度改革を経験し、最後は村域を分割して近隣自治体にその歴史を引き継ぐ形で自治体としての役割を終えました。その変遷については、『市町村名変遷辞典』などの資料に記録されています。また、その歴史は、新潟県内で廃止された多くの市町村の一つとして位置づけられます。

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