昆虫病原糸状菌

昆虫病原糸状菌について

昆虫病原糸状菌（こんちゅうびょうげんしじょうきん）とは、昆虫に特有の感染を引き起こす糸状菌の総称です。これらはその名の通り、昆虫体内に病原性を持たせ、感染を広げる能力を持っています。主に昆虫の体表にカビ状の菌糸を形成し、これによって病気を誘発します。この感染症は一般にカビ病とも呼ばれ、昆虫に深刻な影響を与えることがあります。

生物農薬としての可能性

これまで昆虫病原糸状菌は養蚕業や農業において多大な被害をもたらしてきましたが、近年ではその特性を利用した生物農薬の研究が進められています。生物農薬は化学薬品に代わる安全な手段として注目されており、環境に優しい農業への移行を促進する役割を担うことが期待されています。

僵病菌とその影響

昆虫病原糸状菌の中でも「僵病菌（きょうびょうきん）」と呼ばれるグループは、特に注意が必要です。これらの菌は昆虫の体から水分を奪い、その結果として昆虫を死亡させるだけでなく、体を硬化させてしまいます。この病気は「僵病」とも称され、感染が進むと昆虫の死骸は乾燥してミイラ状になります。

「僵」という字は硬直した死骸を、また「殭」という字は乾燥した死骸を意味しますが、一般的にそれらは常用漢字外として「きょう病」と表記されることが多くなっています。

僵病の種類

僵病には様々なタイプがあり、白僵病や緑僵病などがその例です。それぞれの種類は、菌糸から産生される分生子の色に基づいて命名されています。具体的には、白僵病菌や緑僵病菌などと呼ばれますが、形態学的な観点からの分類であり、特定の菌が複数の名称を持つこともあります。

主な原因菌

• - 白きょう病菌: Beauveria bassiana（セミカビ）
• - 黄きょう病菌: Beauveria bassiana
• - 黒きょう病菌: Metarhizium anisopliae（メタリジウム）
• - 緑きょう病菌: Nomuraea rileyi（Spicaria prasina）、Metarhizium anisopliae
• - 赤きょう病菌: Paecilomyces fumosoroseus
• - 紫赤きょう病菌: Paecilomyces lilacinus

また、こうじかび病は、感染による体の硬化が見られないため、僵病には含まれません。例として、Aspergillus属の菌類によって引き起こされる感染症が挙げられます。

生物学的分類

この虫に特有の病原糸状菌は共通点が少なく、僵病菌においては特に子嚢菌網に属します。以下はその生物学的な分類です：

• - 子嚢菌門: Ascomycota

- 子嚢菌網: Ascomycetes
- ユーロチウム目: Eurotiales
- マユハキタケ科: Trichocomaceae
- Paecilomyces属
- Nomuraea属

• - ヒポクレア目: Hypocreales

- バッカクキン科: Clavicipitaceae
- Beauveria属

• - 接合菌門: Zygomycota

- 接合菌綱: Zygomycetes
- ハエカビ目

昆虫病原糸状菌に関連する新しい情報は、今後も研究が進められる中で更新されることでしょう。これらの菌が持つ特性についての理解が深まれば、農業や環境保護に役立つ新たな手段を見つける手助けとなるかもしれません。

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