明治大学付属八丈島高等学校

明治大学付属八丈島高等学校

東京都の伊豆諸島に位置する八丈島に、かつて短い間存在した私立高等学校に「明治大学付属八丈島高等学校」がありました。正式名称の読みは「めいじだいがくふぞく はちじょうじまこうとうがっこう」。この学校は1950年4月に開校しましたが、わずか5年後の1955年6月には閉校となり、現在の東京都立八丈高等学校へと統合されました。島における高等教育の歴史の一端を担った学校でした。

設立の背景には、第二次世界大戦後の八丈島における高等教育への強い願いがありました。当時、島内では高校設置を求める声が高まり、特に人口の多かった大賀郷村と三根村の間では、学校を自分たちの村に誘致しようという動きが活発化します。この誘致活動の結果、1949年には大賀郷村に東京都立園芸高等学校の八丈分校が設置されました。これが現在の都立八丈高等学校の前身となります。

都立高校の設置が大賀郷村で実現した後も、三根村は独自の高校誘致運動を継続しました。その熱意に応えたのが明治大学でした。三根村出身の明治大学校友が大学上層部へ高校新設の可能性を打診したことがきっかけとなり、話が進展します。特に、当時の明治大学総長であった鵜澤總明氏が、教育の機会に恵まれにくい僻地における教育に関心を寄せていたことが、この付属高校設立決定に大きく影響したと言われています。こうして、八丈島の三根村に新たな私立高校が誕生することになったのです。

明治大学付属八丈島高等学校は、開校当初、男女共学で、1学年につき1学級という小規模な体制でスタートしました。設置学科は、3年制の普通科に加え、4年制の夜間部、そして女子生徒を対象とした本科・研究科各1年制の専攻科目がありました。教育面での大きな特徴の一つとして、希望者に対しては明治大学への推薦入学制度が設けられていたことが挙げられます。これは、島内の生徒にとって本土の大学に進学する貴重な道を開くものでした。

しかし、離島という地理的な条件下での学校運営は、多くの困難を伴いました。最大の課題は、運営にかかる経費が重くかさむこと、そして生徒数が伸び悩んだことでした。離島であるため、物資の輸送コストや教職員の確保・滞在に関する費用などが本土に比べて高額になったと考えられます。生徒数の少なさは、学校の財政をさらに圧迫しました。この財政的な問題を克服し、学校の赤字を補うために、花の栽培や養魚場経営、観光事業など、教育活動とは異なる収益事業を展開することも真剣に検討されていました。

学校の歴史は、開校からわずか5年という短い期間で終わりを迎えます。これは、八丈島内の行政区分が変化したことが大きく影響しています。大賀郷村と三根村が融和し、町村合併へと進んだことを機に、島内の教育体制を一本化する動きが生まれました。その結果、明治大学付属八丈島高等学校は、すでに存在していた都立八丈高校へ統合されることが決定したのです。短い期間ではありましたが、閉校に際して、その校舎や備品などの施設・設備は東京都に移管され、統合先の都立八丈高校に引き継がれることになりました。この学校から巣立った卒業生の総数は326名でした。

以下に、学校の基本的なデータと沿革を示します。

沿革

1950年3月：学校設置が認可される。
1950年4月：開校。教育活動が始まる。
1955年6月：閉校。東京都立八丈高等学校へ統合される。

開校当初の基礎情報

所在地：東京都八丈島三根村仲通（閉校時は町村合併後の八丈村、現在の八丈町の一部）
設置学科：
普通科（修業年限3年）
夜間部（修業年限4年）
専攻科目（女子のみ、本科・研究科ともに修業年限1年）
教職員数：
校長：1名（大橋留治）
教員：12名
職員：3名
校舎：木造2階建て
校歌：明治大学校歌

著名な出身者

* 笹本直衛氏（元八丈町町長）

明治大学付属八丈島高等学校は、わずか5年という短い期間ながら、戦後の八丈島における高等教育の充実に向けた島民の願いと、僻地教育に心を寄せる大学の意向が結びついて誕生した特別な学校でした。離島運営の困難さや行政再編の中でその歴史に幕を下ろしましたが、卒業生たちの学び舎として、また八丈島の教育史の一頁として記憶されています。

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