明治天皇紀

明治天皇紀の概要

『明治天皇紀（めいじてんのうき）』は、宮内省の命令により編纂された明治天皇の伝記であり、明治時代を通じての皇帝の行動や出来事を詳細に記録しています。この作品は、歴史研究における重要な基盤として位置づけられ、特に近代日本史の理解にとって欠かせない資料とされています。

編纂の経緯

1914年（大正3年）11月30日、明治天皇の伝記を編纂するために、宮内省は臨時編修局を設けました。初代の総裁には土方久元、副総裁に金子堅太郎、そして編修長には股野琢が任命されました。しかし、股野は近代史学に疎い官僚だったため、天皇の言行録の編纂に留まる方針で進められました。

1915年（大正4年）には、編修の要綱が定められ、国史としての明治天皇紀を編纂することは明記されませんでした。これに対して金子副総裁は反対の意見を表明し、天皇の伝記を単なる言行録にするべきではないと主張しました。1918年（大正7年）には土方総裁が亡くなり、田中光顕が後任となりましたが、彼も辞職し、金子は翌年に総裁職を担うことになりました。

金子は編修の方針を改め、1920年（大正9年）には明治時代全体を叙述する方針を固めました。新たな編修官長には竹越与三郎が就任し、その後、彼はリベラルな立場から明治天皇紀の編纂に取り組みましたが、そのアプローチが金子と対立を生み、1926年（大正15年）に辞任する結果となりました。竹越の後任には三上参次が就任し、彼は実証的な歴史学者として明治天皇紀の記述を縮小し、効率的に進める方針を採ることとなりました。

完成への道

三上は1930年（昭和5年）から本格的な執筆を始め、1933年（昭和8年）に250巻の完成を果たし、昭和天皇に奉呈しました。その後、臨時帝室編修局は廃止され、残務整理が進められましたが、1934年（昭和9年）には公刊明治天皇御紀編修委員会が設立されましたが、編集の経緯は予想外の展開を見せました。

公刊とその後

長い時間が経過した後、1968年から1977年にかけて全12巻と索引が公表されました。これはかつての公刊明治天皇御紀とは異なり、昭和天皇に奉呈された内容を基に宮内庁が校訂したものです。さらに、附図が2012年（平成24年）の明治天皇百年祭の際に発行されました。これにより『明治天皇紀』は、長きに亘る編纂の努力を経て、ようやく公の場に出ることとなったのです。

まとめ

『明治天皇紀』はその編纂過程も含め、明治時代の歴史を理解する上で重要な資料です。また、天皇の言行や時代背景を知ることで、近代日本歴史の流れをより深く理解する道標ともなっています。これからも、明治天皇紀は学術的な研究や歴史教育に重宝されるでしょう。

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