明石市歌

明石市歌（あかししか）

明石市歌は、兵庫県明石市によって1929年（昭和4年）に市の歌として正式に定められた楽曲です。この歌の制作にあたっては、著名な作詞家・作曲家が起用されました。歌詞は詩人であり国文学者でもあった尾上柴舟（おのえ しゅうしゅう）氏が、そして曲は「朧月夜」や「故郷」といった唱歌の作曲で広く知られる東京音楽学校（現在の東京藝術大学音楽学部）教授の岡野貞一（おかの ていいち）氏が担当しました。

この市歌が誕生した背景には、明石市が市制施行から10周年を迎えるという記念すべき節目がありました。市ではこの重要な年を祝し、市の発展を象徴するような歌の制作を企画。当時、それぞれの分野で第一線で活躍していた尾上氏と岡野氏に制作が依頼され、楽曲が生まれました。完成した楽曲は、1929年10月26日の市議会において審議され、満場一致で承認されました。その後の11月1日付けで、明石市歌として正式に制定されたことが市によって告示され、以来、明石市の歩みと共に歌い継がれてきました。

明石市歌は、その制定年に鑑み、兵庫県内に現在も存在する自治体歌の中で、最も歴史のある楽曲の一つとして特筆される存在です。長い年月の間、市民に親しまれ、市の式典など様々な場面で歌われてきました。

近年においても、この歴史ある市歌は大切にされています。2010年（平成22年）には、明石市制90周年と市歌制定80周年という二つの大きな節目を記念し、新たな取り組みが行われました。この周年事業の一環として、明石市歌の多様なバージョンを収録した記念CDが制作・頒布されたのです。

このCDには、幅広い世代の市民に改めて市歌に親しんでもらうことを目的とし、様々なアレンジが施されたバージョンが収録されました。具体的には、明石フィルハーモニー管弦楽団による壮麗な「オーケストラ伴奏」バージョン、現代的な感覚を取り入れた「ジャズ調のピアノ伴奏（2009年アレンジ）」バージョン、そして制定当時の雰囲気を再現した「ピアノ伴奏（オリジナル）」バージョンなど、実に10通りの異なるアレンジが収録されています。これにより、聴く人それぞれの好みに合わせた形で市歌を楽しむことができるようになりました。CDの制作・頒布は、明石市がこの伝統ある楽曲を未来に継承していくための意欲を示すものでした。

明石市歌は、市の創成期からの歴史を見守り、市民の心の拠り所として、今なお歌い継がれています。その旋律と歌詞は、明石のまちの歴史、文化、そして未来への希望を象徴するものです。

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