明道博

明道 博（みょうどう ひろし）

明道 博（1918年6月28日 - 1988年）は、昭和から平成初期にかけて活躍した日本の著名な園芸学者です。彼の専門分野は多岐にわたり、特に環境保全学、花卉（かき）学、そして造園学において重要な足跡を残しました。

北海道大学を主な活動拠点とし、教育研究機関の運営にも深く関わりました。同大学においては、農学部長、農学部附属農場長といった要職を歴任し、さらに大学全体の評議員としても貢献しました。これらの役職を通じて、研究教育体制の充実に尽力したと考えられます。

研究者としての功績は広く認められており、1963年（昭和38年）には園芸学における優れた業績に対して贈られる園芸学会賞学術賞を受賞しました。さらに、1986年には日本の公園緑地分野での顕著な功労を称える第9回日本公園緑地協会北村賞を受賞しており、彼の研究が実践的な造園や環境保全にも貢献していたことがうかがえます。

明道博の研究は、基礎から応用まで幅広いテーマを扱っています。初期の研究としては、前川徳次郎氏との共同研究による菜種油粕から抽出される植物ホルモンに関するものや、北海道における輸出用球根の栽培技術に関するものが挙げられます。また、ユリやチューリップといった特定の植物の繁殖技術に関する研究も精力的に行いました。例えば、鉄砲百合の鱗片繁殖における形態学的観察や、チューリップの培養鱗片を用いた栄養繁殖、さらにはユリの遠縁種間交雑における幼胚培養技術など、植物の増殖や育種に関する高度な研究成果を発表しています。加えて、海外の園芸事情にも目を向け、アメリカ合衆国の花卉園芸についても紹介を行っています。これらの論文は、『園芸學會雜誌』や『北海道大学農学部邦文紀要』といった学術誌に多数掲載されています。

また、研究成果や専門知識を広く社会に還元するため、多くの著書や監修書を世に送り出しました。主なものとして、園芸に関する広範な知識を網羅した『朝日園芸百科』（編集）があります。これは1984年に出版され、一般の園芸愛好家にとって貴重な情報源となりました。専門的な内容では、退官記念事業会によって編纂された『花卉・造園学とともに歩んで』が、彼の研究人生を振り返る重要な一冊です。他にも、ユリ栽培の手引きとなる『百合(ユリ)入門』（共著）や、寒冷地である北海道での園芸に特化した『北国の鉢植え』（監修）、『楽しい北国の庭と花づくり』といった著作があり、北国における植物栽培や造園技術の普及に大きく貢献しました。初期の著作としては、1958年に出版された『草花』も挙げられます。

彼の研究者としての活動は、同僚や後進の研究者からも高く評価されていました。参考文献として挙げられている筒井澄氏による『明道博教授の停年退官にあたって』と題された論文は、彼の研究業績や人となりが学界においてどのように捉えられていたかを知る手がかりとなります。

このように、明道博は園芸学、特に環境保全、花卉、造園の分野において、教育、研究、そして社会への普及活動を通じて多大な貢献を果たした研究者でした。彼の残した研究成果や著作は、今日においても多くの園芸専門家や愛好家にとって重要な示唆を与えています。

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