星空のむこうの国

星空のむこうの国

『星空のむこうの国』は、小林弘利による日本のライトノベル作品。1984年に集英社文庫コバルトシリーズから刊行され、1986年には小中和哉監督によって映画化もされました。小林氏自身が、小中監督から映画化を前提として執筆を依頼されたという経緯があります。

ストーリー

物語は、「まだ出会っていない恋人たちへー」という印象的なテロップから始まります。11月、シリウス座流星群が近づく頃、高校生の昭雄は交通事故で頭を強打して以来、毎晩同じ夢を見るようになります。夢の中で、少女が何かを訴えるような眼差しで彼を見つめているのです。

ある日、昭雄は電車の窓から夢で見た少女を見かけ、思わず駅のホームで彼女を捕まえます。少女は昭雄に抱きつき涙を流しますが、すぐに人混みに紛れて消えてしまいます。帰宅した昭雄を待っていたのは、自分の遺影が飾られた部屋でした。彼は一週間前の事故で死亡したことになっており、葬儀まで済まされていたのです。

混乱する昭雄は、親友の尾崎に助けを求めます。尾崎は、昭雄が元いた世界とは異なるパラレルワールドに迷い込んだのだと推理します。そして、この世界での少女の名前が理沙であり、死んだ昭雄の恋人だったことを突き止めます。昭雄は理沙が入院する病院を訪れ、二人が生前シリウス流星群を一緒に見る約束をしていたことを知ります。彼は理沙を病院から連れ出し、約束の場所へと向かい、彼女の夢を叶えるのでした。

しかし翌朝、理沙は昭雄と尾崎の会話から、目の前にいる昭雄が自分が愛した昭雄とは別人であることに気づいてしまいます。彼女の容態は悪化し、昭雄やクラスメイトたちに見守られながら息を引き取ります。その瞬間、昭雄の姿も消えてしまいます。

目を覚ますと、昭雄は病院で治療を受けていました。彼は交通事故に遭った日に戻っていたのです。病院の待合室でシリウス座流星群の特集雑誌を読んでいると、弟の見舞いに来た理沙に「星がお好きなんですか？」と声をかけられます。これが二人の初めての出会いとなるのでした。

登場人物

昭雄（あきお）: ごく普通の高校二年生。天体観測が趣味。交通事故をきっかけにパラレルワールドへ迷い込む。
理沙（りさ）: パラレルワールドでの昭雄の恋人。難病を患い余命わずか。昭雄との出会いをきっかけに、彼の世界との繋がりが生まれる。
尾崎: 昭雄の友人。SFマニアで現実主義者。パラレルワールドから来た昭雄を助け、二人の約束を実現させようと奔走する。
上田: 理沙の主治医。

映画 (1986年版)

小中和哉監督の商業映画デビュー作。自主制作映画界で活躍していた小中監督の才能に、池袋文芸坐が出資する形で製作されました。NHKの少年ドラマシリーズへのオマージュとして、『少年ドラマシリーズ THE MOVIE』と銘打たれて宣伝されました。シーンによってモノクロとカラーが切り替わる演出が特徴的で、昭雄にとって理沙が存在しない世界はモノクロ、存在する世界はカラーであるという解釈が監督によって語られています。

キャスト (1986年版)

森昭雄：神田裕司
理沙：有森也実
尾崎：関顕嗣
上田：木村善孝

映画 (2021年版)

2020年には、小中監督自身によるセルフリメイク版の製作が発表され、2021年7月16日に公開。主演は鈴鹿央士が務めました。エイベックス・ピクチャーズとプロダクション・アイジーが製作幹事を務める映画実験レーベル「Cinema Lab」の第2弾作品として公開されました。

キャスト (2021年版)

森昭雄：鈴鹿央士
坂口理沙：秋田汐梨
* 尾崎誠：佐藤友祐（lol）


『星空のむこうの国』は、時を超えた切ない恋物語として、多くの人々の心に深く刻まれています。原作小説、1986年版映画、2021年版映画と、それぞれの魅力をぜひ堪能してみてください。

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