星間分子

星間分子とは、広大な宇宙空間に存在する分子の総称です。これらの分子は、星と星の間にある非常に希薄な空間、いわゆる星間空間の中でも、特に物質の密度が高い「分子雲」と呼ばれる領域や、進化の進んだ「晩期型星」の周囲などに多く見られます。

宇宙に分子が存在することが初めて明らかになったのは、20世紀に入ってからのことです。1930年代には、光学望遠鏡による観測で、希薄な分子雲を通過する紫外線の光が吸収される現象が捉えられていました。そして、1940年には、この吸収が分子雲の中に存在する「CH」（メチルラジン）や「CN」（シアノゲン）といった分子によって引き起こされていることが確認され、これが星間空間に分子が存在することを示す最初の証拠となりました。

その後、1960年代に入ると、電波望遠鏡の技術が飛躍的に発展しました。これに伴い、星間分子の探査も大きく進展します。電波望遠鏡は、分子が放出または吸収する特定の電波を捉えることができるため、光学観測では難しかった分子の検出を可能にしました。この電波観測によって、最初に発見された分子の一つが「OH」（ヒドロキシルラジカル）です。これを皮切りに、次々と新しい星間分子が見つかっていきました。その結果、2000年までには、100種類を超える多様な分子が宇宙空間で確認されるに至っています。

星間空間に存在する分子の量には大きな偏りがあります。最も圧倒的に多く存在する分子は「水素分子」（H₂）です。宇宙の主成分である水素が二つの原子で結びついた形であり、その存在量は他の分子を大きく引き離しています。次に多いのは「一酸化炭素」（CO）です。一酸化炭素は宇宙に比較的豊富に存在する炭素と酸素からできており、水素分子に次ぐ存在量を持つため、分子雲のトレーサーとしてもよく用いられます。

水素分子、一酸化炭素に続いて多く見られる星間分子としては、以下のようなものが挙げられます。

「水」（H₂O）: 私たちにとって最も馴染み深い分子ですが、宇宙にも多く存在します。
「アンモニア」（NH₃）: 窒素と水素からなる分子で、特に密度の高い領域の温度や密度を知る手がかりとなります。
「ホルムアルデヒド」（HCHO）: 有機物の基本的な骨格を持つ分子です。
「シアン化水素」（HCN）: 炭素、水素、窒素からなる分子で、複雑な有機分子の生成に関わると考えられています。

これらの分子は、宇宙における化学反応や、将来の惑星系や生命の誕生のプロセスを理解する上で非常に重要な役割を果たしています。星間分子の研究は、宇宙の進化を探る上で欠かせない分野となっています。

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