映画芸術

映画芸術について

『映画芸術』は、日本の映画業界において重要な位置を占める季刊誌であり、1946年に清水光によって京都で創刊されました。その後、1955年に再刊され、以来、さまざまな映画評論やレビューを掲載しています。この雑誌は、映画の芸術性を掘り下げることに特化しているため、一般の映画雑誌とは一線を画した存在です。

創刊から再刊までの経緯

『映画芸術』は1946年に初版が発行されましたが、一度休刊を余儀なくされました。しかし、1955年に大橋恭彦が編集・発行人となり再刊を果たします。その後の数十年にわたり、著名な若手作家たちが執筆陣に名を連ねることとなりました。1963年ごろには、吉本隆明や三島由紀夫といった作家たちが寄稿し、徐々にその影響力を強めていきました。

当初の発行部数は6000部でしたが、1969年末には13000部にまで伸び、一定の読者層を確保。しかし、1970年には経営難からストライキが発生し、大橋恭彦が発行の手を引くこととなり、小川徹が編集長に就任しました。

映画業界の変遷と影響

小川編集長の時代は、アングラ映画やポルノ映画など、一般的な映画雑誌では取り上げられにくいジャンルをも積極的に取り上げるようになります。また、映画批評の方法論にも新たな視点が加わり、佐藤重臣の『映画評論』や松田政男の『映画批評』と並ぶ評論誌としての地位を確立しました。

しかし、政治的視点の強さから、一部読者には賛否が分かれる結果を招くこととなるのです。その後、1972年に隔月刊とし、最終的には休刊に至りました。休刊時には「葬式パーティー」が開かれるほどその影響は大きかったのです。

復刊と新しい執筆陣

1989年、脚本家の荒井晴彦が編集長と発行人を引き継ぎ、季刊誌として復刊。この復刊後は、映画人の楽しみや悩みをテーマにすることが多くなり、徐々に映画業界の現実にも焦点を当てるようになります。さらに、独自のランキングである「日本映画ベストテン」や「ワーストテン」を発表し、一般の映画アワードとは異なる視点で評価を行っています。特にワーストテンの発表は他誌にない特徴となり、その内容は議論の的となることもしばしばです。

ここで注目すべきは、選者の幅広さです。映画評論家から一般の会社員まで、さまざまな立場の人々が選考に参加しており、その結果がより多角的な評価を生んでいます。特に、逆に好評を博す映画がワースト1位に選出されることが多く、選者の見解の多様性を如実に示しています。

最新の動向と批評の姿勢

最新の動向としては、アニメーション映画を対象外とする方針が採られましたが、その決定には賛否が分かれ、映画業界内外から批判の声が上がりました。このように『映画芸術』は、作り手や観客の視点を反映し、時代に応じた映画論を展開してきました。

以上のように、『映画芸術』は、映画を愛する人々にとって欠かせない情報源となっており、独自の視点と評価方法で日本映画界の重要な役割を担っています。

もう一度検索