春林軒

春林軒：日本の外科手術史に輝く医学校

和歌山県紀の川市に位置する春林軒は、江戸時代の著名な医師、華岡青洲の住居兼病院、そして医学校でした。春林軒塾、楽水堂とも呼ばれ、世界初の全身麻酔手術成功によって名声を博した青洲の業績を伝える重要な歴史的建造物です。

青洲と春林軒の設立

文化元年（1804年）、世界で初めて全身麻酔を用いた手術に成功した華岡青洲は、全国から多くの患者や弟子希望者を集めるようになりました。しかし、それまでの小さな住居兼診療所では手狭になったため、青洲はより広い施設の建設を決断します。こうして、建坪220坪の規模を誇る住居兼病院・医学校「春林軒」が誕生しました。

人材育成と医術の普及

春林軒は、単なる病院ではなく、多くの医師を育成する医学校としての役割も担っていました。春林軒から巣立った門下生は1,033名にのぼり、大阪の中之島に設立された分校「合水堂」の門下生を含めるとその数は2,000名を超えます。これらの門下生たちは、日本全国に華岡流外科医術を広める役割を果たしました。

主な門下生

原右膳（原順吾）：吉益家門人ののち、華岡青洲・春林軒門人となる
松山棟庵
藤井貞民（秋田藩医）
内藤南省（秋田藩医）
神保玄察（秋田藩医）
北島元養（秋田藩医）

春林軒の建物

春林軒の建物は、青洲の時代の主屋（住居・診察室・手術室・講義部屋）、蔵、そして後に復元された門下生住居棟、病棟、薬調合所、用務室、米倉、看護婦棟、物置などで構成されています。主屋と蔵は青洲の時代からの建物で、大正時代に一度移築されましたが、平成9年には元の場所に戻されました。

現在、これらの建物は「青洲の里」の中核施設として保存され、博物館として公開されています。館内では、人形や映像を用いて当時の春林軒の様子が再現されています。

建築概要
竣工：文化年間（1804年～1818年）中期から後期
構造：木造
敷地面積：1,614m²
延床面積：8棟533m²
所在地：〒649-6604 和歌山県紀の川市西野山473

青洲まつりとアクセス情報

毎年10月下旬には、「青洲まつり」が開催されます。時代行列や演劇、屋台など、盛りだくさんのイベントが楽しめます。

利用情報
休館日：毎週火曜日（祝日の場合は翌日）、年末年始
所在地：〒649-6604 和歌山県紀の川市西野山473
交通アクセス：和歌山線（JR西日本）名手駅下車 徒歩20分

周辺情報

春林軒周辺には、「青洲の里」、「フラワーヒルミュージアム」、「華岡青洲顕彰記念公園」、「旧名手宿本陣（華岡青洲の妻・加恵の実家）」、「粉河寺」など、歴史的建造物や観光スポットが点在しています。

春林軒は、日本の医学史、特に外科手術史において極めて重要な場所であり、訪れることで華岡青洲とその時代を深く理解することができます。

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