春福大根

春福大根（はるふくだいこん）は、愛知県清須町で発見されたとされる、晩生秋蒔きのダイコンの一種です。その来歴や発祥については詳しい記録が残されておらず、以下のような口伝のみが伝えられています。

清須町内の農家の畑で、積雪にもかかわらず枯死しなかった個体が現れました。その個体から種子を採取し、近隣の農家に配布したことが、春福大根の栽培の始まりであるとされています。

春福大根という名前は、収穫時期が早春であり、農家の収入源が少ない時期に重要な収入源となることに由来しています。この名前は、当時の農家にとって、このダイコンがどれほど貴重であったかを物語っています。

『大正昭和名古屋市史』には、春福大根が栽培されていた場所として、名古屋市内の日比津町、堀越町、稲生町の庄内川中洲および沿岸地域が記録されています。これらの地域は、水はけが良く、ダイコン栽培に適していたと考えられます。この記録から、春福大根が当時、名古屋市周辺で広く栽培されていたことが伺えます。

春福大根は、その来歴に謎が多いものの、早春の農家の生活を支えた重要な作物のひとつでした。現在では栽培している農家は少なくなっていますが、その歴史と価値は語り継がれていくべきでしょう。



参考文献

愛知県立農事試験場 編『愛知の蔬菜』愛知県立農事試験場、1919年5月31日。
名古屋市 編『大正昭和名古屋市史 第1巻 緒論及原始産業篇』名古屋市、1953年11月1日。

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