昭和39年7月山陰北陸豪雨

昭和39年7月山陰北陸豪雨

概要

昭和39年7月山陰北陸豪雨（しょうわ39ねん7がつさんいんほくりくごうう）は、1964年（昭和39年）7月17日から20日にかけて、日本の山陰地方と北陸地方を中心に発生した大規模な豪雨災害です。

この豪雨は、当時日本付近に停滞していた梅雨前線に対して、朝鮮半島付近で消滅した台風7号が変化した温帯低気圧由来の、非常に高温多湿な気流が大量に流れ込んだことによって引き起こされました。その結果、各地で記録的な雨量を観測し、広い範囲で甚大な被害が発生しました。

災害の背景と気象経過

豪雨災害が発生する直前の1964年7月上旬から中旬にかけて、山陰地方や北陸地方では梅雨前線の活動が活発化しており、度々日降水量が100ミリから200ミリに達する強い雨に見舞われ、既に一部地域で被害が出始めていました。このような状況下で、追い打ちをかけるようにさらに記録的な豪雨がこれらの地域を襲ったのです。

気象状況としては、7月17日午後に台風7号が熱帯低気圧となり、韓国の済州島付近で消滅しましたが、その影響で高温多湿な南西からの気流が日本列島に向かって継続的に流入し、大気の状態が著しく不安定となっていました。

18日には、前線を伴った一つの低気圧が日本海中部から秋田県沖へと進行。そして、18日の夜から19日にかけては、これとは別の低気圧が山陰沖を東へ進みました。これらの低気圧や前線の影響を受け、特に島根県の出雲地方から鳥取県西部にかけての地域、および石川県や富山県では、7月18日の日降水量が200ミリを超える記録的な雨量となりました。また、松江市や金沢市では、わずか12時間の間に200ミリもの猛烈な雨が降る集中豪雨も発生しました。

被害の状況

記録的な大雨により、対象地域では土砂災害や河川の氾濫が広範囲で相次ぎました。特に島根県での被害は深刻で、県内の出雲市を中心に多数の山崩れやがけ崩れが発生し、これによって100人を超える犠牲者が出ました。

この豪雨による全体的な被害規模は、死者・行方不明者が合計132人、家屋の全壊・半壊、一部破損、床上・床下浸水といった損壊・浸水被害を受けた建物が58,000棟以上という、極めて大規模なものでした。

交通網への影響も甚大で、特に島根県では一畑電気鉄道立久恵線や周辺の道路が寸断され、佐田町（現在の出雲市の一部）が一時的に孤立状態に陥りました。被災した一畑電鉄立久恵線は、その後の復旧作業が行われることなく、そのまま廃線となる悲劇を迎えました。

なお、新潟県では、他の被災地域に比べて降水量はそれほど多くありませんでしたが、豪雨のわずか1ヶ月前である6月16日に発生した新潟地震によって地盤が緩んでいた影響が大きく作用し、結果として比較的大きな被害が発生しました。

命名

この一連の広範囲かつ甚大な被害をもたらした豪雨災害は、日本の気象庁によって正式名称として「昭和39年7月山陰北陸豪雨」と命名されました。

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