時不変系

時不変系とは？

時不変系（Time-invariant system）とは、システムへの入力信号の遅延が、出力信号の同等の遅延にのみ影響を与えるシステムです。言い換えると、システムの特性が時間によって変化しないシステムを指します。

時不変系の定義

数学的には、システムが時不変であるとは、入力信号をx(t)、出力信号をy(t)、時間シフトをδとすると、以下の関係が成り立つことを意味します。

入力信号をδだけ時間シフトさせた場合、x(t+δ) の出力は y(t+δ) となります。これは、システムの出力が、時間tそのものには依存せず、入力信号のみに依存することを示しています。

時変系との違い

時変系（Time-variant system）は、システムの特性が時間によって変化するシステムです。時間シフトさせた入力信号に対して、出力信号が単純に時間シフトされたものにならない点が、時不変系との大きな違いです。

時不変系の例

時不変系の例:

線形時不変（LTI）システム：多くの電気回路や信号処理システムは、近似的にLTIシステムとして扱われます。
デジタルフィルタ：入力信号に特定の処理を施すデジタルフィルタは、その特性が時間によらず一定であれば、時不変系となります。
多くの物理システム：重力による落下運動やバネの振動など、時間によらず一定の物理法則に従うシステムは、時不変系としてモデル化できます。

時変系の例:

時間とともに変化するゲインを持つ増幅器
時刻によって異なる係数を用いる制御システム
経年劣化によって特性が変化する機械システム

時不変系の判定方法

システムが時不変であるかどうかを判定するには、以下の2つの方法が考えられます。

1. 数学的定義を用いた方法：入力信号を時間シフトさせ、その出力信号が時間シフトされた出力信号と一致するかを検証します。
2. ブロック図による方法：システムをブロック図で表現し、遅延ブロックを導入することで、システムの出力が時間シフトされた入力信号に対してどのように変化するかを分析します。時間シフトに対する可換性が確認できれば、時不変系であると判定できます。

具体的な例題

以下の2つのシステムについて、時不変系であるかどうかを判定してみましょう。

システムA: y(t) = t x(t)

このシステムは、出力信号が時間tに依存しています。時間シフトさせた入力信号 x(t+δ) に対する出力は (t+δ)x(t+δ) となり、単純に時間シフトされた出力 y(t+δ) = tx(t+δ) とは一致しません。したがって、システムAは時変系です。

システムB: y(t) = 10 x(t)

このシステムは、出力信号が時間tに依存していません。時間シフトさせた入力信号 x(t+δ) に対する出力は 10x(t+δ) となり、これは y(t+δ) = 10x(t+δ) と一致します。したがって、システムBは時不変系です。

時不変系の重要性

時不変系は、システム解析において非常に重要な役割を果たします。なぜなら、時不変系に対しては、ラプラス変換やフーリエ変換などの強力な数学的手法を適用できるからです。これらの手法を用いることで、システムの周波数特性やインパルス応答などを解析し、システムの挙動を深く理解することができます。

まとめ

この記事では、時不変系について、その定義、時変系との違い、判定方法、そして具体的な例題を通して解説しました。時不変系の概念は、システム理論や信号処理の基礎となる重要な概念です。この理解を深めることで、様々なシステムの解析や設計において、より高度な技術を習得できるでしょう。

もう一度検索